小さい事務所の作り方!物件を探すコツや必要な書類を紹介【準備物リスト付】

「起業して最初の事務所を作る」「事務員だけの営業所を用意する」「2~3人の支店を立ち上げる」といった場合は、小規模な事務所で十分でしょう。なるべくコストをかけず、なおかつ成果の上がるものにしたいものです。

そこでこの記事では、大まかな計画立案や物件の探し方のコツ、準備物などを紹介。小さい事務所を作ろうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

大まかな計画を立てる

目的に合った事務所を効率良く作るために、まずは大まかな計画を立てましょう。

・エリアは?

・予算は?

・支店と営業所どちら?

などが決めておきたいポイントです。

(1)エリアを決める

どのエリアに事務所を出すのかを検討します。事務所を作る目的を軸にして、交通アクセスやコストなどを考慮して決めましょう。

(例)

・作業メイン(来客もない・賃料を抑えたい)

⇒オフィス街や駅近を避ける

 

・商談メイン(外出も来客も多い)

駅から5分以内など交通便利な場所を選ぶ

 

・ブランド力を強化したい

知名度の高いビジネス街などを選ぶ

 

・近隣の経営者と交流したい

繁華街を選ぶ

このように、事務所設立の目的を明確にして、目的に応じたエリアを選定してください。

(2)予算を決める

どれぐらいの予算を使うのかも、あわせて決めておきます。事務所を開設すると、初期費用はもちろんのこと、月々の費用や税金などが発生します。主なものは次の通りです。

▼初期費用

・登録免許税(6万円)※支店登記する場合

・設備費用(内装、デスク、チェア、複合機など)

・敷金・礼金

・仲介手数料

・前家賃

・賃貸保証料

・火災保険料

・引越し費用

▼毎月

・事務所賃料

・水道光熱費

・通信費(電話・インターネット)

・人件費

▼毎年

・都道府県民税均等割(約2万円/年)

・市町村民税均等割(約5万円/年)

・税理士費用

※本社と同じ自治体内であれば、均等割の追加は発生しません。

何と言っても大きいのは「賃料」と「人件費」。特に開業初期は業績も不安定です。無理なく払える金額におさめるよう心がけましょう。

(3)支店と営業所どちら?

本社以外に小さい事務所を作る場合、「支店」「営業所」という選択肢があります。混同されがちですが、支店と営業所には明確な違いがあります。それは「登記が必要かどうか?」という点です。

・営業所・・・・・・・登記しなくても良い。

・支店・・・・・・・・・登記する必要あり。

このように、営業所なら登記不要、支店なら登記しなくてはなりません。

「気軽に拠点を増やしたい」「事務手続きが面倒」という場合は、登記不要の営業所が手軽です。

一方で支店の場合、登記の手間はかかりますが、本社と同じような機能や権限を持つことが可能。そのため「他社と契約を結ぶ」「融資を受ける」などが目的なら、支店を作る必要があります。

(4)事務所要件を確認する

業種によっては、「〇〇業法」「〇〇法」などの法律により、事務所の要件が決まっている場合があります。たとえば不動産業の場合、「宅地建物取引業法」によって次のことが義務付けられています。

・標識の掲示

・報酬額の掲示

・業務に関する帳簿の備付け

・従業者名簿の備付け

・成年者である専任の宅地建物取引士(宅建士)の設置

他にも、建設業や人材派遣業、人材紹介業なども要件が定められています。計画時点でチェックしておくことをおすすめします。

事務所物件の探し方

事務所物件を探すには「不動産ポータルサイトで検索する」「地元密着の不動産会社から紹介してもらう」「自治体や商工会議所に相談する」などの方法があります。

(1)不動産ポータルサイトで検索する

情報収集の手始めには、事務所物件を扱う不動産ポータルサイトが便利です。

エリアや賃料、面積、築年数などの希望条件を入力すれば、候補となる物件が一覧表示されるため、手早く豊富な情報を拾うことができます。

LIFULL HOME’S「貸事務所」

at home「貸事務所」

次の2つは「住居の賃貸ポータル」ですが、「事務所可」にチェックを入れると、事務所にも使える住宅物件がヒットします。

Suumo「賃貸住宅」

LIFULL HOME’S「賃貸」

(2)地元密着の不動産会社から紹介してもらう

地元密着型の不動産会社の場合、ポータルサイトへの掲載に力を入れず、未公開情報を保有していることも少なくありません。エリアがすでに決定している場合には、足を運んで紹介してもらうのも一つの方法です。

(3)自治体や商工会議所に相談する

自治体や商工会議所に相談するのも良いでしょう。自治体が運営ないし補助しているインキュベーション施設を破格で借りられる可能性があります。

インキュベーション施設とは、創業間もない起業家やスタートアップ企業の支援を目的としたオフィス施設です。

たとえば東京都では、東京都産業NET「インキュベーションオフィス」にある通り、都内各所に施設があります。

物件選びと事前準備を成功させるポイント

星の数ほどある物件。ポイントを押さえて選び、事前準備も同時に進めなければ、時間ばかりが過ぎていきます。労力を無駄にしないためにも、次の3つを意識しましょう。

(1)優先順位を決める

物件探しで多いのが「駅から5分以内」「賃料は月10万円まで」「できれば築浅」と、つい欲張ってしまうこと。ところが条件を100%満たす物件とは、なかなか出会えないのが現実です。

「何を目的に事務所を作るのか?」を軸として、希望条件を整理してください。優先順位をつけて選ぶことがポイントです。

(例)

・商談を成功させたい

利便性や周囲の環境、採光などを重視。

 

・効率的な作業を行いたい

広さや断熱性を重視

 

・最低コストで事務所要件を満たす

15㎡程度のマンションの一室。

確固たる戦略に基づいて、捨てるべき要素は捨てる勇気をもちましょう。

(2)区分所有ではなくオーナー所有物件が狙い目

小さい事務所なら、「マンションの一室で十分」と考えている方も多いでしょう。

ところが区分所有のマンションは管理組合があるため、管理規約に“住居用途のみ”など用途制限を規定する傾向があります。つまり事務所には使えないということです。

一方で、オーナーの一存で決められる物件は、住居でも「事務所可」にできます。事務所物件としてマンションを考えているなら、狙い目と言えるでしょう。

(3)内見では「写真撮影」と「採寸」を

内見の際は、室内および共用部の写真を撮影するようにしましょう。「この物件でいいだろうか?」という確認に加えて、準備物の下調べも兼ねることができます。

たとえば、スイッチや電源コンセント、電話/TV端子などの位置、エアコンの製造年、照明器具の口金サイズなど、内見後すぐに忘れてしまう人が多いのではないでしょうか。写真に収めておけば、これらの情報を後日参照できて有用です。

また、オフィス家具や複合機、カーテン・ブラインドなどを発注する段階で困らないよう、採寸を行うことも大切です。

仲介会社の力を借りることも考えましょう。相談すればサービスの一環として採寸を代わりにやってくれることがあります。

なお確実に情報を集めるために、

・間取り図

・筆記用具

・メモ用紙

・カメラ

・メジャー

などを用意して、内見にのぞむことをおすすめします。また、できれば最寄り駅から歩いて、経路や所要時間、さらには買物施設・飲食店などを確認するようにしましょう。

入居審査に必要な書類

内見で物件を絞り込めたら、入居申し込みをします。法人契約をする場合、一般的に次のような書類を提出します。

・会社の登記簿謄本(全部事項証明書)

・会社の実印

金融機関と違って、それほど多くの資料を求められるわけではありませんが、貸主や保証会社によっては、会社案内や決算書の提出が必要となる場合もあります。

ただし新規開業で契約をする場合は、次のような書類提出を求められることもあります。

・事業計画書

・課税証明書

・運転免許証

・通帳および健康保険証のコピー

・定款

新規開業の場合、賃貸借契約を締結する時点では法人登記をしていない状態です。そのため法人名義で契約締結できません。そこで一般的に、以下のような方法がとられます。

▼方法(1)

まずは個人名義で契約し、「当物件を所在地として株式会社を登記予定であり、設立後に賃借人を法人に変更する」趣旨の特約を入れる。会社設立後、変更契約書を再締結する。

▼方法(2)

まずは代表者の自宅で先に法人登記した後、法人名義で賃貸借契約を締結。この場合は本店移転に登録免許税30,000円(管轄外への移転は60,000円)がかかります。

このほか、貸主との合意が成立すれば、個人から法人に転貸借(又貸し)する方式も考えられます。

【リスト】事務所の立ち上げに必要な準備物

事務所の立ち上げに必要な準備物を、分類ごとにご紹介します。

(1)テナント表示

事務所の所在を示すテナント表示(看板など)を設置します。

玄関ドアが金属製であれば、マグネット製のテナント表示板を用いると撤去時に跡が残らず便利です。両面テープを使用する場合は、原状回復費用を抑えるため、マスキングテープの上から貼るなど工夫しましょう。

「少人数だからテナント表示は不要」と考える方もいるかと思います。ですが金融機関は、実態調査のためにテナント表示の有無を確認する内部規定を定めていることがあります。融資を受けたい場合は、簡易なものでもいいので、必ず設置しておきましょう。

また、来客や郵便物等の配達員が混乱しないよう、郵便受け共用部にある各区画のテナント表示部分にも法人名や屋号を示す「カッティングシート」や「テナント表示板」等を設置しておきましょう。

(2)インフラ契約

事務所を機能させるためには、各種契約が必要です。

・電気

・ガス

・水道

・インターネット・WiFi

・固定電話・FAX

特にインターネットの開設には時間がかかり、申込から開設まで1~2ヶ月を要することも珍しくありません。契約が決まったら速やかに着手するようにしてください。

近年、Wi-Fi完備マンションも増えています。そういうマンションを選べば、インターネット開設の手間なく入居初日からネットが使えるのでおすすめです。

(3)オフィス家具・備品

仕事をするためにはオフィス家具や備品も必要です。

・カーテンまたはブラインド

・パーティション

・デスク

・袖机(そでづくえ)

・デスクライト

・椅子

・書棚またはキャビネット

・ホワイトボード

・コートハンガーおよびハンガー

・ゴミ箱

・傘立て

・靴べら

重いものが多いので、何度も買い出しに行ったり配送日がバラけてしまったりすると、非効率です。事務所の開設日(または移転日)が決まった時点で、すかさず必要な資材を発注し、日時指定をしておくのがコツです。

(4)情報機器

パソコンをはじめとする情報機器も必須です。

・パソコン

・PCモニタ(およびケーブル類)

・PC用品(キーボード・外付ドライブ・ヘッドセットなどを必要に応じて)

・複合機(コピー・プリンタ・FAX)

・インターネット用機器(ホームゲートウェイ・WiFiルータ等)

・電話機

・シュレッダー

・携帯電話等の充電器/充電ケーブル

業種にもよりますが、A3複合機はおすすめです。A4の機種ですと、たまにA3出力が必要になる場合、コンビニに移動して作業する必要があり、時間のロスになってしまいます。

(5)家電

必要に応じて、電化製品を調達します。

・冷蔵庫

・電子レンジ

・湯沸かしポット

・掃除機

・空気清浄機

・携帯電話等の充電器

・延長コードやテーブルタップ(いわゆるタコ足)

上記はあくまで一例となります。電化製品は高価なものもありますので、必要なものを必要なタイミングで揃えましょう。

(6)事務用品

事務用品も一通りそろえましょう。

・ノート

・ペン

・穴あけパンチ

・ホッチキス

・定規

・ハサミ・カッター

・のり

・秤(郵便料金確認用)

こちらも一例です。事務用品はいずれも少額ですが、何度も調達するのは面倒ですから、漏れがないよう、移転時に一気に調達してしまいましょう。

(7)消耗品

消耗品類も必要です。

<事務関連>

・プリンタ用紙

・トナー

・郵便切手・封筒・レターパックなど

・ファイル類(契約書等の保管用)

 

<衛生関連>

・ティッシュペーパー

・マスク

・アルコール除菌剤

 

<キッチン・手洗い関連>

・食器用洗剤

・ハンドソープ

・ペーパータオル

・ゴミ袋

・食器類(マグカップなど)

・飲料類

 

<トイレ関連>

・トイレットペーパー

・トイレ用洗剤

・ペーパータオル

・ゴミ袋

事務用品と同様に、少額のものがほとんどです。時間を有効利用するためにも、個別の価格にこだわらず、ネットでの一括発注をおすすめします。

(8)仮眠用品

仮眠を想定する場合には、以下の品目を用意します。

・ソファベッド/折りたたみベッド

・寝具(タオルケットなど)

事務所で仮眠するとなると、一人事務所の場合や猛烈に働く想定をしている場合に限られると思いますが、該当する場合には検討してみてください。

公的機関などへの届出

事務所としての届け出が必要です。

支店の登記をする場合は、本店所在地の法務局(※)で手続きを行い、登録免許税6万円を納めます。同時に複数の支店を設置するなら「6万円×支店数」を納めます。登記の期限は、支店設置から原則として2週間以内です。

このほか、必要に応じて、税金や社会保険料等に関する公的機関への届け出をします。以下に本店移転の場合の例をあげます。()内に手続の実施時期を示しました。

<税務署(国税関連)>
・「異動事項に関する届出」(すみやかに)
・「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」(1か月以内)

<都道府県税事務所・市町村(地方税関連)>
・「異動届出書(法人事業税・都民税)」(10日以内)
※移転前と移転後の管轄が違う場合は、移転前・移転後の両方で手続きが必要な場合あり

<年金事務所(社会保険関連)>
・「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」(5日以内)

<労働基準監督署(労働保険関連)>
・「労働保険名称・所在地等変更届」(10日以内)

<公共職業安定所(雇用保険関連)>
・「雇用保険事業主事業所各種変更届」(10日以内)

<許認可関連>
・宅建業の例:都道府県庁に「宅地建物取引業者名簿登載事項変更届」(30日以内)

必要書類は、ほとんどの場合、公的機関のホームページから入手出来ますが、労働保険に関する書類は、窓口交付となっています。

手続実施は原則、窓口受付となっている場合が多いですが、郵送可の場合もあるので、各提出先に確認することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。事務所の設置はやるべきことが多いのですが、それ自体が付加価値を生む業務ではありません。ですので効率よく事務所を開設して、本業の成長に時間を投資しましょう!

気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。