ものづくり補助金に採択されたけれど、手続きや流れが分からない……そんな事業者様も多いことでしょう。採択後の手続きを怠ると、補助金を受給することができなくなる可能性もあるため、確実に手続きすることが大切です。
当記事では、ものづくり補助金の採択後に行う手続きや流れを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
※手続きの内容や期限に関しては、13次締切分をベースにしています。実際の手続きにあたっては、必ず採択された締切回次の最新情報をご確認ください。
主な流れ
ものづくり補助金に採択された後、やるべきことは大きく分けて次の5つです。
(1)交付申請
(2)遂行状況報告
(3)実績報告
(4)精算払い要求
(5)事業化状況報告
(1)から(4)までを完了することで、はじめて補助金が振り込まれます。期限が設けられているものもあるため、早めの準備をおすすめします。(5)に関しても5年間の報告が義務づけられています。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
採択後の手続き(1)交付申請
採択されたら、まず行うのが交付申請です。
<ポイント>
・交付申請することで、補助金を受け取る権利を確保できる。
・採択から1カ月以内に行うのが目安。
・事業計画の一部変更も可能。
・2~4週間ほどで交付決定、補助事業をスタートできる。
交付申請とは?
交付申請とは、補助金を受け取る権利を確保するための手続きです。採択はあくまで審査が通ったという「内定」の状態。交付申請が認められることで、はじめて正式な対象者となり、「交付決定」となります。
交付申請が認められると、補助事業開始となります。違う言い方をすれば、交付が決定してはじめて補助事業を始められるということ。交付決定前の「発注・契約・納品」などは全て補助対象外となるので注意しましょう。
交付申請の期限は?
交付申請は、採択から1カ月以内に行うことが目安となっています。ただし、1カ月を過ぎても、罰則はありません。
とはいっても、書類に不備があると差し戻しされ、補助事業の開始が遅れます。納得のいく補助事業を行うためにも早めの交付申請をおすすめします。
事業計画の一部変更も可能
補助事業は採択された計画通りに行うことが前提ですが、取得予定の中古設備が売り切れてしまった場合など、やむを得ない事情があれば、交付申請のタイミングで事業計画の一部変更も可能です。
交付決定までの期間は?
交付申請は事務局により審査され、不備があれば差戻しが行われます。不備の修正が完了した後に「交付決定通知」が発行されます。交付決定通知を受けると、補助事業を開始できます。この段階ではじめて発注を行うことができます。
交付決定までの期間は、不備の有無により異なりますが、おおむね2週間から4週間と想定しておくのがよいでしょう。
手続き方法は?
Jグランツ(電子申請システム)にログインして、申請内容ファイル(Excel)をダウンロード。必要があれば修正して、関係書類と併せて提出します。
法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は確定申告書が必要です。さらに見積依頼書や見積書、相見積書も提出が必要です。
詳しくは補助事業の手引き(13次締切)や補助事業の手引き(12次締切)など、採択された締切回次の手引きをご覧ください。Jグランツの操作方法に関しては、jグランツ入力ガイドに詳しい説明があります。
採択後の手続き(2)遂行状況報告
続いて、遂行状況報告という手続があります。
<ポイント>
・遂行状況報告とは、事務局への中間報告(不要の場合もあり)。
・提出期限は、事務局から届くメールや文面で確認。
(多いのは、交付決定月の翌月から3カ月後、さらにその翌月15日)
遂行状況報告とは?
遂行状況報告とは、いわば“事務局への中間報告”です。事務局から要求があったときは速やかに遂行状況報告書を作成し、事務局に提出します。
全て事業計画通り進んでいるのであれば、その旨を報告するだけで構いません。変更した内容がある場合や、補助事業が予定より遅れている場合などは、必要事項を報告します。
なお、補助事業が短期間で完了する場合など、遂行状況報告を求められない場合もあります。
報告書提出の期限は?
遂行状況報告書の提出期限は、交付決定月の翌月から3カ月後、さらにその翌月15日に設定されることが多いようです。例えば4月10日に交付が決まったとすると、8月15日が期限となります。
提出期限は、事務局から送られてくる依頼メールや書面にも書かれていますので、必ず確認しましょう。
手続き方法は?
交付申請と同じく、Jグランツ(電子申請システム)にログインして手続きを行います。流れや具体的な操作については、Jグランツ入力ガイド-遂行状況報告編-で分かりやすく紹介されていますので、ご確認ください。
(番外編)中間監査を受けることもある
遂行状況報告とは別に、中間監査を受けることがあります。中間監査では、事務局の担当者が現地に来て調査を行います。購入した製品や発注書の提示を求められる可能性もありますので、普段から整理や管理を徹底しておきましょう。
採択後の手続き(3)実績報告
続いて行うのが、実績報告です。
<ポイント>
・実績報告によって、補助事業を終えたことを事務局に報告。
・提出期限は次の2つのうち早い方。
⇒「事業完日から30日後」もしくは「採択発表日から約1年後」
・購入証拠書類や画像データなど、多くの準備が必要。
実績報告とは?
実績報告とは、補助事業を終えたことを事務局に報告する手続きです。補助事業の具体的な内容と成果を記載した「実績報告書」を作成して提出します。
報告書提出の期限は?
実績報告書の提出期限は、次の2つのうち早い日となります。
・事業完了日(最後の支払を完了した日)から30日後
・採択発表日から約1年後(13次で採択された場合は令和5年(2023)12月20日)
なお実績報告では、実際に購入したことが分かる証拠書類や写真データなど、準備すべきものがたくさんあるため、早めの着手をおすすめします。
提出書類は?
実績報告資料は全て、WordやExcel、PDFなどの電子ファイルで提出します。ファイルは、次のようにフォルダ分けを行います。
<zipファイルにまとめる書類>
A-1_実績報告書:実績報告書、経費明細表、クラウド利用費の内容、取得財産等管理台帳、試作品等(成果)受領書
A-2_出納帳:預金出納帳、現金出納帳、通帳コピー(表紙含む)
A-3_預り金(専門家経費を個人払いで支払った場合のみ):預り金元帳、納付書コピー
B:使用した費目に関する経理証拠書類すべて(見積依頼書、発注書、請書、検収書、請求書、振込依頼書、等)
B-1_機械装置・システム構築費、B-2_技術導入費、B-3_専門家経費、B-4_運搬費
B-5_クラウドサービス利用費、B-6_原材料費、B-7_外注費、
B-8_知的財産権等関連経費、B-9_広告宣伝・販売促進費、B-10_感染防止対策費
補助金申請を行う場合には、補助対象経費を必ず銀行振込で支払うようにしてください。まれに、現金払いや信販会社等のショッピングクレジットでの支払いをしてしまう事業者様がいらっしゃいます。銀行振込以外だと補助対象として認められませんので、ご注意ください。
実績報告に際しては、次の通り画像も必要です。
機械装置などの納品時の写真は、後で撮り直すことができません。忘れずに撮影し、確実に保管しておきましょう。
この後「確定検査」へ
実績報告が完了すると、事務局による「確定検査」が実施されます。問題がなければ補助額が決まり、補助金の支払い手続き(次項の「精算払請求」)へと進むことができます。
なお、実績報告で必要な書類を紛失した場合、補助金を受け取れない可能性もあります。普段から書類をきちんと管理しておくことが大切です。
手続き方法は?
Jグランツ(電子申請システム)にログインして行います。詳しくは実績報告資料等作成マニュアルで紹介されていますので、ご確認ください。
採択後の手続き(4)精算払請求
次に行うのが「精算払請求」です。
<ポイント>
・精算払請求とは、補助金の振込を依頼するための手続き。
・期限はおおむね実績報告期限の約2カ月後。
精算払請求とは?
精算払請求とは、事務局に補助金の振り込みを依頼するための手続きです。
精算払請求の期限は?
精算払請求手続の期限は、おおむね実績報告期限の約2カ月後に設定されます(13次で採択された事業者は令和6年(2024年)2月末まで)。期限までに請求手続きをしなかった場合、交付決定が取消となることがありますので、ご注意ください。
期間中の「概算払」も可能
補助金は原則として、精算払請求が終わってはじめて振り込まれます。ただし、補助期間中に一度だけ「概算払」を受けることができます。
概算払いとは、簡単に言えば“前払い”のこと。自己資金の用意が難しく、なおかつ事務局が必要だと判断した場合のみ、利用することが可能です。
上限は補助金交付決定額の 90%、金額は「支払済み補助対象経費×補助率」ですが、実績報告と同程度の手続が求められるため、最後の手段と考えるのがよいでしょう。概算払が必要な場合は、まずは事務局にご相談ください。
手続き方法は?
Jグランツ(電子申請システム)にログインして行います。Jグランツの操作方法に関しては、jグランツ入力ガイドに詳しい説明があります。
なお精算払請求ができるのは、確定検査を受け、補助金額が確定した後です。精算払請求の手続きが終わるとおよそ1カ月で、補助金が指定銀行口座に入金されます。
採択後の手続き(5)事業化状況報告
補助金入金後に行うのが事業化状況報告です。
<ポイント>
・事業化状況報告は、補助事業に関して行う状況報告。
・補助事業終了後の5年間、計5回必要。
・報告期間は、毎年4月1日~5月31日の2カ月間。
・一定の利益が出た場合「収益納付」が必要になる。
事業化状況報告とは?
事業化状況報告とはその名の通り、補助事業に関して行う状況報告です。この報告は補助事業終了後の5年間、計5回必要です。報告を怠ると、それ以降の補助金に不利になる可能性が高いので、注意しましょう。
事業化状況報告の期限は?
報告期間は毎年4月1日~5月31日の2カ月間です。1回目の報告時期は、補助金額が確定した時期で決まります。
補助金確定日が年度末に近くなった場合、すぐに報告開始となりますが、賃金台帳を作っていれば特に慌てることはありません。
提出書類は?
事業化状況報告では、次の書類が必要です。
・事業化状況・知的財産権等報告書
・事業化状況等の実態把握調査票
・返還計算シート
・直近の損益計算書(※)
・賃金台帳
賃金台帳に関しては、説明動画も用意されていますので、ご確認ください。
一定の利益が出た場合の「収益納付」
補助金は“多くの場合に返済不要”なお金です。ところが報告内容に基づいて計算し、一定の利益が発生すると、その一部を返さなくてならない場合があります。これを「収益納付」といいます。
詳しくは別記事「利益が出たら返納が必要?「収益納付」の仕組みや計算方法、対策を紹介」で紹介していますので、ご覧ください。
手続き方法は?
事業化状況・知的財産権等等報告システムにログインして、手続きを行います。ログインすると、トップページに「事業化状況報告機能の操作マニュアル(補助事業者向け)」が表示されます。詳しい操作方法については、マニュアルをご確認ください。
まとめ
補助金に採択された後にも行うべき手続が多数ありますので、気を抜かずに行うようにしてください。また、落とし穴もありますので気をつけてください。特に注意すべきポイントは、「交付決定後に発注・契約・納品などを行わねばならない」ことと、「必ず銀行振込で支払う」ことです。
支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからご相談ください。