門戸が拡大!売上増でもOK!事業再構築補助金の主な変更点を解説【令和5年度】

コロナ禍の中、大型補助金として登場した事業再構築補助金。令和5年(2023年)度も継続が決まり、第10回の公募が3月30日から始まりました。(※)

第10回からは新枠も多数登場し、複雑化したように見えます。ですが各種要件が緩和され、門戸が広がりました。チェックしておきたい主な変更点をお伝えします。

※第10回の公募は令和5年(2023年)6月30日まで。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金はその名の通り、企業の事業再構築を促す補助金です。

コロナ禍に登場してから回数を重ね、既に公募も10回目。令和5年(2023年)度は5,800億円の補正予算が組まれています。

前年度予算額の6,123億円と比べるとやや減少したものの、最大5億円の「サプライチェーン強靱化枠」が新設されるなど、手厚い支援が用意されています。また売上減少要件がない新設の「成長枠」は、多くの企業にとって申請しやすい枠と言えそうです。

「グリーン成長枠」など一部の申請枠においては、2回目の申請・採択も認められることになりました。過去に採択を受けた企業にとっても、再度活用できる補助金となっています。

令和5年(2023年)4月11日時点で公開されている公式サイトは以下です。

事業再構築補助金

令和5年(2023年)度から、一体何が変わる?

第10回の主な変更点を紹介します。

・売上が減らなくても申請できる「成長枠」の新設

・売上10%減で申請できる「物価対策・回復応援枠」の新設

・斜陽産業を手厚く補助する「産業構造転換枠」の新設

・超大型!最大5億円「サプライチェーン強靭化枠」の新設

・「グリーン成長枠」に要件緩和の「エントリー枠」が登場

・大幅賃上げで補助率の引上げ(成長枠・グリーン成長枠)

・一部の枠で、2回目の申請が可能に

一つずつ詳しく見てみましょう。

(1)売上が減らなくても申請できる「成長枠」の新設

従来のメイン枠であった「通常枠」の代わりに、成長枠が新設されました。注目すべきは、売上減少要件の撤廃です。

これまで通常枠に申請するには、“コロナ前と比べて売上高が減少していること”が基本要件でした。ところが後継となる成長枠では、売上が減っていなくても申請可能です。

これにより、多くの企業に門戸が開かれることとなりました。売上の面で二の足を踏んでいた企業にとって、大きなチャンスと言えるでしょう。

補助額や補助率は次の通りです。

(出典)事業再構築補助金の概要

補助率については「中小企業1/2・中堅企業1/3」と、全体的に下がっています。

一方の補助額は、従業員規模に応じて上限設定がなされており、101人以上の事業所だと最大7,000万円小規模事業者でも最大2000万円の補助を受けることができます。

成長枠の対象となるのは、成長分野への事業再構築に取り組む事業者。市場規模が10%以上拡大する業種や業態に取り組む場合、成長枠で申請できます。


なお、成長枠の対象業種は、

①経済産業省「工業統計調査」、経済産業省「企業活動基本調査」を基に、要件を満たすとされる業種

②業界団体等が要件を満たすことについて示した業種・業態

という基準で選定されます。

対象業種は幅広く、例えば「調味料製造業」「医薬品製造業」「ソフトウェア業」「自動車卸売業」など。4月13日時点で109業種が指定されていますので、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。

対象となる業種や業態の詳細は、公式サイトの成長枠の対象となる業種・業態の一覧でご確認ください。

(2)売上10%減で申請できる「物価対策・回復応援枠」の新設

コロナ禍や物価高で経営が苦しい……そうした企業のために「物価対策・回復応援枠」が新設されました。

この枠は、従来の「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」が一つにまとめられたもの。ただし統合されただけではなく、うれしい変更があります。それは、売上高減少要件が30%から10%に緩和されたこと。そのため多くの中小企業が利用できるようになりました。

補助額に関しては、最大3,000万円となっています。

出典)事業再構築補助金の概要

成長枠と比べると補助額は小さいものの、指定された「成長分野」以外でも申請可能です。しかも売上減少要件が10%に引き下げられているので、かなり多くの事業者が申請できるのではないでしょうか?

なお、補助率は成長枠より高く設定されており、「中小企業2/3・中堅企業1/2」です。

(3)斜陽産業を手厚く補助する「産業構造転換枠」の新設

産業構造が大きく変化する昨今。過去から今後のいずれか10年で、市場規模が10%以上縮小する業種や業態向けに「産業構造転換枠」が新設されました。

重点的なサポートが必要なことから、補助額と補助率どちらも高いことが大きな特徴です。

(出典)事業再構築補助金の概要

廃業を伴う場合は2,000万円が上乗せされるため、補助額は最大9000万円。中小企業の場合、補助率は2/3です。

なお業界団体が要件を満たしていると示した場合、指定業種・業態となります。

出典)事業再構築補助金の概要

現在のところ「出版業」「粘土かわら製造業」が指定を受けています。

(4)超大型!最大5億円「サプライチェーン強靭化枠」の新設

「サプライチェーン強靱化枠」は、これまでには見られなかったタイプの申請枠です。

注目すべきは何と言っても、最大5億円という補助額の大きさ。過去最大クラスの補助を受けることができます。

(出典)事業再構築補助金の概要

対象となるのは、

海外で製造する部品などの国内回帰を進めている

国内サプライチェーンの強靱化地域産業の活性化に取り組んでいる

といった条件を満たしている事業者です。

補助額が大きい分、「設備投資を行う事業場内の最低賃金を地域の最低より30円以上高くする」など、求められる要件はやや厳しくなっています。 ですが国際政治が不安定化し、経済安全保障に対する懸念が高まる昨今、大きな後押しとなる支援だと言えます。検討してみてはいかがでしょうか。

(5)「グリーン成長枠」に要件緩和の「エントリー枠」が登場

温暖化対策における事業再構築を目指す「グリーン成長枠」に、エントリー枠が登場しました。

第6回の公募から始まり、手厚い支援で注目されたグリーン枠ですが、要件の厳しさがハードルの高さにつながっていました。エントリー枠が登場したことで要件が緩和され、使い勝手が良くなっています。

(出典)事業再構築補助金の概要

例えば、人材育成にかける時間を比べると、スタンダードは「2年以上」であるのに対して、エントリーは「1年以上」で構いません。時間は倍半分の違いがあるのに、補助上限額にはさしたる差がないのは魅力と言えるでしょう。

なおグリーン分野とは、国が掲げている次の14分野です。

(出典)事業再構築補助金 「グリーン成長枠」 想定事例集

このように、エネルギー分野を中心にしつつ、幅広い業種に関連します。要件をよく確認して検討しましょう。

(6)大幅賃上げで補助率の引上げ(成長枠・グリーン成長枠)

成長枠・グリーン成長枠に申請する事業者が、大幅な賃上げを行う場合、補助率の引き上げが行われます。

・中小企業・・・・・・・1/2 → 2/3

・中堅企業・・・・・・・1/3 → 1/2

なお要件は、補助期間内に、

・給与支給総額を年平均6%以上増加させる。

・事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げる

の2点。賃上げは一時的には負担増に思えますが、良質な従業員の採用や、モチベーションを高めることにもつながり、結果的に業績向上にもつながります。これを機に検討してみてはいかがでしょうか。

(7)一部の枠で、2回目の申請が可能に

事業再構築補助金は、原則として「1事業者につき採択は1回」でした。ところが第10回からは、グリーン成長枠とサプライチェーン強靭化枠について、2回目の申請や採択が認められます。

ただし申請が可能になるのは、次の2つのパターンです。

<パターン1>
グリーン成長枠以外で1回目の採択を受けた(第1回~第9回)

グリーン成長枠・産業構造転換枠・サプライチェーン強靭化枠で申請できる(第10回~)

<パターン2>
グリーン成長枠で1回目の採択を受けた(第1回~第9回)

サプライチェーン強靭化枠で申請できる(第10回~)

補助額が大きく、2回目の申請も可能なグリーン成長枠は、「別枠扱い」がなされているといえます。関連分野の事業者様は、ぜひご検討ください。

事業再構築補助金の採択率

気になる採択率を見てみましょう。第1回から8回までの全体の採択率は、次の通りです。

※小数点第2位以下を四捨五入。

このように全体で見ると、最近はほぼ半数が採択されている状況です。

申請件数に関しては、令和4年(2022年)度は制度が広く知られて応募が一巡したためか、徐々に減少。特に第8回は最も少ない数となりました。現在が「狙い目」と言えるかもしれません。

まとめ

令和5年(2023年)度の事業再構築補助金、最大のポイントは「売上減少要件の撤廃」です。成長を目指す事業者にとって、新分野に進出する絶好のチャンスが到来しました。ただし制度が年々複雑化しているので、専門家にも相談しつつ、しっかり読み解き、挑戦してみてください。

支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからご相談ください。