【事業再構築補助金】採択後の手続きや流れを解説

採択されるまで一苦労の事業再構築補助金。実は採択後もやるべきことが山積みで、手続きには期限もあります。怠ると補助金を受け取れなくなるケースもあり、スケジュール管理や事前準備が大切です。

当記事では、事業再構築補助金の採択後に行う手続きや流れを解説します。ぜひ参考にしてください。

主な流れ

事業再構築補助金に採択された後、やるべき手続きは次の通りです。

(0)事前着手申請
(1)交付申請
(2)状況の報告
(3)実績報告
(4)精算払の請求
(5)事業化状況報告

通常は(1)の「交付申請」が最初の手続きです。ただし事業再構築補助金の場合は、(0)の「事前着手申請」を行うことをおすすめします。

なぜならこの手続きをしておくことで、前倒しで補助事業を始めることができるから。そのため、交付決定が下りるまでの支払いも経費として認められるのです。

その後、(1)から(4)までを完了することで、はじめて補助金が振り込まれます。どれも大切な手続きばかりですので、きっちり把握しておきましょう。

採択後の手続き(0)事前着手申請

事前着手申請について見てみましょう。

<ポイント>
・事前着手申請をすれば、交付決定前から補助事業を始められる
・申請期限は交付決定日。

事前着手申請とは?

事前着手申請とは、交付決定前に補助事業に取り組むことを、事務局に認めてもらうための手続きです。

本来は、交付決定後の支払いのみが経費の対象です。ただし交付決定までは時間がかかります。(1)の交付申請を行い、場合によってはそれから2~3カ月待たされて……と、なかなか補助事業を始めることができません。

ところが事前着手申請をしておくと、交付決定を待たずして補助事業をスタートできるのです。

事前着手申請は、必須の手続きではありません。ですが手間がさほどかからず、メリットが大きい手続きのため、「少しでも早めに補助事業を開始したい」という事業者様は、申請することをおすすめします。

事前着手申請の期限は?

事前着手申請の期限は、「交付決定日」までです。

申請のタイミングとしては、「採択申請時」もしくは「「採択決定が出てから」のどちらでも大丈夫です。

手続き方法は?

Jグランツ(電子申請システム)の専用ページにログインして行います。

具体的な操作方法は、[第10回]事前着手申請システム操作マニュアル[第6回~第9回]事前着手申請システム操作マニュアルなどで紹介されています。

採択された回次の操作マニュアルをご確認ください。

採択後の手続き(1)交付申請

続いて、交付申請を紹介します。

<ポイント>
・交付申請することで、補助金を受け取る権利を確保できる。
・採択から1カ月以内に行うのが目安。
・事業計画の一部変更も可能。
・交付決定までの期間は読めない

交付申請とは?

交付申請とは、補助金を受け取る権利を確保するための手続きです。交付申請して認められてはじめて「交付決定」となります。

気をつけたいのが、「交付決定が出ないと、補助事業は始められない」ということ。「採択された!」と喜び勇んで高額な機械を購入しても、交付決定前だと対象経費になりません。

なお事前着手申請を行った事業者も、交付申請は必要です。忘れずに行いましょう。

交付申請の期限は?

交付申請には明確な期限はありません。「採択から1カ月以内」が一つの目安ではありますが、1カ月を過ぎてもペナルティーはありません。

ただし、なるべく早く着手することをおすすめします。なぜなら次のような事情があるためです。

・書類に不備があると差し戻しされ、補助事業の開始が遅れる。
・補助事業が行える期間は「採択発表日から14カ月後」(※)まで。

納得のいく補助事業を行うためにも、採択通知書が届いたら速やかに準備しましょう。

※「グリーン成長枠」は16カ月後。

事業計画の一部変更も可能

補助事業は、採択された計画通りに行うことが前提です。ただし「導入を予定していた中古設備が売り切れた」などのやむを得ない事情があれば、理由を明記して交付申請し、変更することも可能です。

とはいえ変更が必ずしも認められるとは限りません。事務局の審査で、却下されるケースもあります。

交付決定までの期間は?

交付決定までの期間はケースバイケースです。書類不備による差し戻しがあるかないかで異なってきます。

ちなみに事務局によると、通常かかる期間は「30営業日」との記載があります。ただしこれもあくまで目安であり、超過する事例も出ているので要注意です。

手続き方法は?

事業再構築補助金の電子申請システムにログインして、「交付申請書別紙ファイル」をダウンロード。必要があれば修正して、関係書類と併せて提出します。

法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は確定申告書が必要です。さらに見積依頼書や見積書、相見積書も提出が必要です。提出先は、Jグランツ(電子申請システム)です。

詳しくは、補助事業の手引き 第6回~第9回公募用補助事業の手引き 第1回~第5回公募用など、採択された回の手引きをご覧ください。Jグランツの操作方法に関しては、「Jグランツ」入力ガイドに詳しい説明があります。

採択後の手続き(2)状況の報告

続いて、状況の報告です。

<ポイント>
・状況報告とは、事務局への中間報告不要の場合もあり)。
・提出期限は、事務局から届くメールや文面で確認。

状況の報告とは?

状況の報告とはその名の通り、事務局に対して状況を報告すること。ただし、事務局から指示があっても、

・既に補助事業が終了している
・実績報告書の作成に着手している
・おおむね1カ月以内に補助事業が終了、実績報告書を提出する予定

の場合は、報告は不要です。

報告書提出の期限は?

事務局から指示があった場合は「状況報告書」を作成し、なるべく速やかに提出します。提出期限については事務局からのメールをよく読み、指示に従うようにしましょう。

手続き方法は?

交付申請と同じく、Jグランツ(電子申請システム)にログインして手続きを行います。「様式第5 状況報告書」に必要事項を記入して、Jグランツで提出してください。

(番外編)中間検査を受けることもある

状況の報告とは別に、事務局担当者による「中間検査」を受けることがあります。購入した製品や発注書の提示を求められる可能性があります。すぐ提示できるように、整理を心がけましょう。

採択後の手続き(3)実績報告

続いて行うのが、実績報告です。

<ポイント>
・実績報告によって、補助事業を終えたことを事務局に報告
・提出期限は次の2つのうち早い方。
⇒「事業完了日から30日後」もしくは「補助事業完了期限日
・購入証拠書類や画像データなど、多くの準備が必要。

実績報告とは?

実績報告とは、補助事業を終えたことを事務局に報告する手続きです。補助事業の具体的な内容と成果を記載した「実績報告書」を作成して提出します。

報告書提出の期限は?

実績報告書の提出期限は、次の2つのうち早い日となります。

・事業完了日(最後の支払を完了した日)から30日後
・補助事業完了期限日

補助事業完了期限日は「交付決定通知書」に記載されていますので、確認してください。

期限内を守れない場合、補助金を受け取ることができません。実際に購入したことが分かる証拠書類や写真データなど準備すべきものも多いので、早めの着手をおすすめします。

提出書類は?

実績報告にあたっては、次の書類が必要です。

(1)Jグランツで入力もしくはダウンロード

様式は、事業再構築補助金の電子申請システムで入手できます。

(出典)実績報告添付書類一覧

様式第6は直接入力し、その他の様式はダウンロードしたファイルに必要事項を入力します。

(2)証拠書類を整理する

補助対象経費の区分にかかわらず必要な証拠書類は、次の通りです。

(出典)実績報告添付書類一覧

補助対象経費の区分ごとに、さまざまな書類が必要です。一例を挙げると、次の通り。

・見積書
・見積依頼書
・相見積書
・契約書
・完了後の写真
・請求書
・振込依頼書(※銀行振込以外は補助対象外)

補助対象経費の区分ごとに、必要な書類は変わります。例えば建物費を計上しているなら「工事完了後の図面」、運搬費を計上しているなら「移送先リスト・発送先リスト」も必要です。

補助金申請を行う場合には、補助対象経費を必ず銀行振込で支払うようにしてください。まれに、現金払いや信販会社等のショッピングクレジットでの支払いをしてしまう事業者様がいらっしゃいます。銀行振込以外だと補助対象として認められませんので、ご注意ください。

詳しい内容に関しては、実績報告書等作成マニュアル実績報告添付書類一覧でご確認ください。

手続き方法は?

Jグランツ(電子申請システム)にログインして行います。証拠書類も全てPDF化してJグランツで提出します。

この後「確定検査」へ

実績報告が完了すると、事務局による「確定検査」が実施されます。なお必要に応じて、事務局担当者が現地調査を行います。確認を求められた書類や写真を速やかに提示できるように、ファイリングして整理しておきましょう。

確定検査後に問題がなければ補助額が決まり、「補助金決定通知書」が発行されます。これでようやく、補助金の支払い手続き(次項の「精算払の請求」)へと進むことができます。

採択後の手続き(4)精算払請求

次に行うのが「精算払の請求」です。

<ポイント>
・精算払の請求とは、補助金の振込を依頼するための手続き。
・「補助金確定通知書」を受け取った後に行う。

精算払の請求とは?

精算払の請求とは、事務局に補助金の振り込みを依頼するための手続きです。

精算払の請求期限は?

精算払請求ができるのは、確定検査を受け、「補助金確定通知書」を受け取った後です。提示された期限までに請求手続きをしなかった場合、交付決定が取消となることがありますのでご注意ください。

期間中の「概算払」も可能

補助金の振り込みは原則として、精算払請求が終わってからです。ただし場合によっては 、補助期間中に一度だけ“前払い”を受けることができ、これを「概算払」といいます。

概算払が利用できるのは、自己資金の用意が難しく、なおかつ事務局が必要だと判断した場合のみ。しかも、実績報告と同程度の手続が求められるため、最後の手段と考えるのがよいでしょう。概算払が必要な場合は、まずは事務局にご相談ください。

手続き方法は?

Jグランツ(電子申請システム)にログインして行います。書類に不備がない場合、8営業日ほどで指定口座に入金されます(※)。

※金融機関の都合により、多少前後することがあります。

採択後の手続き(5)事業化状況報告

補助金入金後に行うのが事業化状況報告です。

<ポイント>
・事業化状況報告は、補助事業に関して行う状況報告
・補助事業終了後の5年間、初回とあわせて計6回必要
・報告期限は毎年決算日の3カ月後
・一定の利益が出た場合「収益納付」が必要になる。

事業化状況報告とは?

事業化状況報告とはその名の通り、補助事業に関して行う状況報告です。この報告は、完了日が属する年度の終了後を初回として、以降5年間(計6回)必要です。報告を怠ると、それ以降の補助金に不利になる可能性が高いので、注意しましょう。

事業化状況報告の期限は?

初回は原則として、補助事業終了年度の決算日の3カ月後、それ以降も毎年決算日の3カ月後までに報告を行います。

なお報告期間に関しては案内メールも届きますので、きちんとチェックしておきましょう。

提出書類は?

事業化状況報告では、次の書類が必要です。

・事業化状況・知的財産権報告書
・事業化状況等の実態把握調査票
・損益計算書
・貸借対照表
・労働者名簿
・賃金台帳(大規模賃金引上枠の補助事業者のみ)
・製造原価報告書
・販売費及び一般管理費明細表(内訳)

この中でポイントになるのが賃金台帳です。補助金確定日が年度末に近くなった場合、すぐに報告開始となりますが、賃金台帳を作っていれば特に慌てることはありません。

一定の利益が出た場合の「収益納付」

補助事業を行って一定の利益が発生すると、その一部を返さなくてならない場合があります。これを「収益納付」といいます。

利益は報告内容に基づいて計算を行います。詳しくは別記事「利益が出たら返納が必要?「収益納付」の仕組みや計算方法、対策を紹介」で紹介していますので、ご覧ください。

手続き方法は?

事業化状況報告システムにログインして、手続きを行います。詳しい内容については、事業化状況報告システム操作マニュアルをご確認ください。

まとめ

この記事では、事業再構築補助金に採択された後の手続きをおさらいしました。

ポイントは、比較的新しい制度ということもあってか、事務局の手続が停滞しがちであること。「性善説」で期待していると“はしご”を外されてしまいかねません。手続きが遅延した場合に行き詰まってしまわないよう、身を守る取り組みを心がけてください。

支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからご相談ください。