それぞれの地域には、その地域ならではの魅力が詰まっています。「地域の特性を生かし、付加価値の高い事業を展開したい」と考えるなら、「地域経済牽引事業計画」の策定をおすすめします。
策定した計画が認定されると、税制優遇をはじめとした支援が受けられます。この記事では、地域経済牽引事業計画の概要やメリット、承認件数などを解説します。
地域経済牽引事業計画とは?
日本の経済成長のためには、地域経済の活性化が欠かせません。そこで政府は、地域の特性を生かした事業に挑戦し、高い価値を生み出す事業者に対して、さまざまな支援を行っています。
支援を受けるために必要となるのが「地域経済牽引事業計画」です。
策定するにあたってまず確認したいのが、各都道府県がつくっている基本計画。平成29年(2017年)に施行された「地域未来投資促進法」に基づき、都道府県や市町村では「基本計画」を策定しています。
例えば、東京都の基本計画を見てみましょう。
例えば東京都では
・機械や金属、電子・デバイスなどの産業集積を活用した成長ものづくり分野
・情報通信やIT関連産業などの産業集積を活用した第4次産業革命分野
・観光名所や多摩・島しょ地域における自然・景観などの観光資源を活用した観光分野
に力を入れています。
もし合致する分野があるなら、基本計画をふまえて「地域経済牽引事業計画」を策定します。そして都道府県知事から承認を得られると、支援が受けられるという流れです。
令和4年(2022年)8月3日時点で公開されている公式サイトは以下です。
地域経済牽引事業計画のメリット
地域経済牽引事業計画の承認を受けると、さまざまな支援策が受けられるようになります。
例えば、計画に基づいて設備を取得した場合、特別償却(最大50%)または税額控除(最大5%)を受けることができます。一般論としては、税額控除が得でしょう。
なお、計画に基づいて土地や建物を取得した場合、不動産取得税もかかりますし、ずっと固定資産税も払い続けることになります。事業を始めたいが資金繰りが気になって、二の足を踏んでしまう事業者様もいることでしょう。
ところが地域経済牽引事業計画が承認されると、自治体によっては、不動産取得税の課税免除や固定資産税の減免などが受けられる場合があります。
例えば、群馬県桐生市では、地域経済牽引事業計画に基づいて取得した建物・構築物・土地に対して課税される固定資産税について、3年間課税が免除されます。
その他にも、工場をつくるにあたって環境施設面積率や緑地面積率が緩和される場合もあります。
自治体によって内容や条件が異なりますので、詳しくは各自治体のホームページなどでご確認ください。
認定されるための要件
具体的な要件は自治体ごとに変わります。例えば、東京都大田区であれば次の通り。
東大阪市は以下の通りです。
このように認定を受けるためには、
(1)地域の特性活用が必須である
(2)数千万円から1億円超という多額の付加価値増が求められる
(3)売上や雇用者数などの増加が求められる
ということが特徴です。
なお付加価値増に関しては、事業計画期間を通じての累計が対象です。
いずれにしてもこの制度では、かなり大きな投資計画が想定されていることが分かります。
過去に承認された事例
これまでに承認された事例には、次のようなものがあります。
いずれの事例に関しても、先ほど挙げた認定要件を満たすような、比較的大規模な投資となっているのが見て取れます。
なお基本計画そのものは、都道府県が作成したものと、市町村が作成したものに分かれますが、事業者が作成した地域経済牽引事業計画を承認するのは、いずれの場合も都道府県知事となります。
地域経済牽引事業計画の承認率は?通過のためのポイントは?
地域経済牽引事業計画の承認率は公表されていません。そのため割合は分かりませんが、これまでの承認件数は明らかになっています。
地域経済牽引事業計画の承認は、令和元年(2019年)12月31日時点で、1,982件です。他の支援制度と比較して、知名度が低いのか、まだ活用が広がっていないようです。承認率も公開されていません。
特に目立つ傾向として、製造業が大半を占めることが指摘できます。
地域経済牽引事業計画は、設備投資に関する優遇施策です。そのため多額の設備投資を行う製造業が多くなります。
ただし地域特性の活用は、当然ながら製造業に限りません。「ツーリズム」「クールジャパン」などのキーワードも含まれますので、要件を満たす場合にはぜひ検討してみてください。
通過のためのポイントは、特に明記されていませんが、
(1)自治体が掲げる基本計画をしっかりと読み込み、その内容に沿う形にする
(2)承認要件を満たすことを、具体的・定量的に示す
この2点が大切です。
まとめ
地域経済牽引事業計画は、知る人ぞ知る支援制度です。地域の特色を活かした事業展開によって設備投資を予定している事業者様は、活用を検討してはどうでしょうか。
支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからご相談ください。