先端設備等導入計画とは?概要やメリット、認定件数などを紹介

先端設備等導入計画は、「最新設備を導入して、生産性を高めたい」と考える中小事業者向けの制度です。認定された計画に基づいて設備を導入すると、固定資産税の軽減や金融支援などを受けることができます。

この記事では、先端設備など導入計画の概要やメリット、認定件数などを解説します。

先端設備等導入計画とは?

先端設備等導入計画は、中小企業や小規模事業者の設備投資を、強力に後押しするためにつくられた制度です。

認定を受けるためには、「計画期間内に」「労働生産性を一定程度向上させるため」「先端設備等」を導入する計画を策定し、市区町村に提出します。

なお、この市区町村とは、“新たに導入する設備を設置する市区町村”です。

例えば「本社は東京都千代田区にあるが、設備は茨城県土浦市内にある工場に導入する」という場合は、工場のある土浦市に申請するということ。

提出先の市区町村が「導入促進基本計画」を策定し、事業者が提出した計画がその計画に合致する場合、認定を受けることができます。

導入促進計画については、「〇〇市+導入促進計画」といったキーワードで、検索してみてください。市区町村によっては計画内容に加えて、何件の認定を目指しているのか目標値を掲げている場合もあります。

例えば、“モノづくりのまち”として知られる東京都大田区の導入促進計画には、「計画期間中に5年間で300件程度」、東大阪市の導入促進計画には、「計画期間の5年間に600件」と書かれています。

ぜひ一度、導入を検討している自治体の導入促進計画をご確認ください。

先端設備等導入計画の公式サイト

令和4年(2022年)6月21日時点で公開されている公式サイトは以下です。

中小企業庁「経営サポート『先端設備等導入制度による支援』」

先端設備等導入計画のメリット

先端設備等導入計画の認定を受けると、次の2つのメリットがあります。

(1)固定資産税が3年間「ゼロ~1/2」に軽減される

一つ目のメリットとして挙げられるのが、固定資産税の軽減措置です。

設備投資をすれば、購入費用のほかに維持費がかかります。特に固定資産税は、購入費用に比例して大きくなるため、設備投資に踏み切るか悩む事業者様も多いことでしょう。

認定された先端設備等導入計画に基づき、条件を満たした設備を取得した場合、固定資産税が3年間軽減されます。

市町村によって比率は異なりますが、その範囲は「ゼロ~1/2」。つまり場合によっては、「固定資産税が最大3年間ゼロになる」ということです。

どのような自治体が「固定資産税ゼロ」であるかは、次のページをご覧ください。

参考:中小企業庁「令和2年8月末までに先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロの措置を実現した自治体を公表します」

固定資産税の軽減対象となる設備は、次の6種類です。

(1)機械装置(160万円以上/10年以内)
(2)測定工具及び検査工具(30万円以上/5年以内)
(3)器具備品(30万円以上/6年以内)
(4)建物附属設備(60万円以上/14年以内)
(5)構築物(120万円以上/14年以内)
(6)事業用家屋(取得価額の合計額が300万円以上の先端設備等とともに導入されたもの)

※()内の数字は、(最低取得価格/販売開始時期)。

これらの新しい設備を使うことで、後述する「生産性向上に資する指標」が旧モデル比で「年平均1%以上」向上することが条件です。

特に建設現場で利用する建設機械や工場で利用する工作機械については、最新機種の導入時に、ぜひセットで行いたい手続きです。

(2)資金繰りの支援が受けられる

二つ目のメリットは、資金繰りの支援が受けられるということ。認定された事業者は資金調達に際して、別枠での追加保証が受けられます。

出典:中小企業庁「先端設備等導入計画策定の手引き」

このように、先端設備等導入計画の認定を受けることで、普通保険や無担保保険、特別小口保険などの保証限度額が2倍へと膨らむのです。うまく活用すれば、事業拡大への大きな足がかりとなるでしょう。

ただし金融支援の審査は、市区町村による先端設備等導入計画の認定審査とは別に行われます。そのため先端設備等導入計画が認定されたとしても、必ずしも金融支援が受けられるとは限りませんので気をつけてください。

金融支援の活用を考えているなら、事前に信用保証協会(または窓口となる金融機関)に相談することをおすすめします。

認定されるための要件

認定されるためには、先ほどもお伝えしたように

(1)「計画期間内に」「労働生産性を一定程度向上させるため」「先端設備等」を導入する計画を策定する。

(2)新たに導入する設備が所在する市区町村における「導入促進基本計画」などに合致する。

という二つの要件を満たす必要があります。それぞれ詳しく見てみましょう。

(1)「計画期間内に」「労働生産性を一定程度向上させるため」「先端設備等」を導入

それぞれの条件は次の通りです。

出典:中小企業庁「先端設備等導入計画について」

▼計画期間

3年間、4年間または5年間です。市区町村によって期間が異なります。

▼労働生産性を一定程度向上

労働生産性とは、

(営業利益+人件費+減価償却費)/労働投入量 

で算出される数字です。労働投入量は、労働者数または労働者数×1人当たりの年間就業時間のどちらかで算出してください。

出てきた数字が、直近の事業年度末と比較して、年平均3%以上向上させることが条件です。

▼先端設備等

先端設備等とは、労働生産性の向上に必要な生産、販売活動などに使用される設備のうち、機械装置や測定工具および検査工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアを指します。

先端設備等導入計画の認定率は?通過のためのポイントは?

先端設備等導入計画の認定率は公表されていません。そのため割合は分かりませんが、これまでの認定件数は明らかになっています。

例えば、最新データとして公表されている数字を見ると、件数はこのように推移しています。

・平成30年(2018年)度・・・・・・・21,999件
・令和元年(2019年)度・・・・・・・・20,076件
・令和2年(2020年)度・・・・・・・・10,496件

出典:中小企業庁「先端設備等導入計画における認定件数の推移」(月別・都道府県別)

この3年の件数を見ると、約2万件から約1万件へと減少しているのが見てとれます。

先端設備等導入計画は、ものづくり補助金の加点対象に指定されていたこともあり、およそ2万件の認定がなされていました。しかし、令和元年(2019年)には約1万件に減少。これは加点対象から除外された影響が出ているのでしょう。

こうした流れを見ていると、今後は年間1万件程度の認定がなされることが見込まれます。

認定率が未公表のため明言はできませんが、比較的ハードルが低いことが推測されます。申請書類を不備なく仕上げれば、認定の可能性が高くなるでしょう。

ただし注意したいのが、各市町村によって制度が少しずつ異なること。提出する書類の種類や認定されるまでの期間などが違う場合があるため、事前に確認することをおすすめします。

「〇〇市+先端設備等導入計画」というキーワードで検索してください。各自治体の必要書類を確認することができます。

まとめ

先端設備等導入計画は、「固定資産税の減税」と「金融支援」が主な効果です。特に減税は確実な経営改善が見込めますので、最新設備を導入する際にはできる限り認定をとるようにしてください。

支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。