無料・登録不要!中小機構の「経営自己診断ツール」使い方解説

経験や勘頼りでは、ビジネスの変化についていけない時代になりました。経営の舵を正しく切るためには、経営分析が欠かせません。

今回紹介する「経営自己診断システム」は、中小機構が提供している無料ツール。決算書の財務データを入力するだけで、自社の経営状況や経営危険度を把握できて便利です。概要や使い方を解説します。

経営自己診断システムとは?

「経営自己診断システム」は、中小機構(正式名称:独立行政法人 中小企業基盤整備機構)によって開発された経営分析ツールです。主な特徴は次の通り。

(1)登録不要の無料診断

「経営自己診断ツール」は、無料・登録不要で使えます。会社名や個人情報などを入れる必要もありません。入力された財務情報は保存されないため、情報漏えいの心配もなし。気軽に使うことができます。

(2)約200万社の財務データと比較できる

CRD(Credit Risk Database; 中小企業信用リスク情報データベース)に蓄積されている、約200万社の財務データと比較が可能です。うち7割は「年商3億円以下」の比較的小規模な企業のため、中小企業の実態を反映しているといえます。

CRDとは、中小企業金融の円滑化を図ることを目的に、経済産業省と中小企業庁が主導して開発されたデータベースです。

信用保証協会及び金融機関が、取引先中小企業の財務データ・非財務データ・デフォルトデータを、企業名を暗号化した状態でCRD協会に対して定期的に提供することにより構築されます。

CDRの会員企業は令和5年(2023年)4月1日現在で166社。すべての信用保証協会と多くの100超の金融機関などからなり、各社も融資審査に利用しています。

(3)経営の危険度もチェックできる

同業種のデフォルト企業と比較することで、経営の危険度を点検することができます。

デフォルト企業とは、倒産や借入金の延滞などにより債務不履行に陥った企業の総称。自社の状況とデフォルトした会社の状況を比較することにより、早めに手を打ち、倒産リスク軽減につなげることができます。

令和5年(2023年)5月30日時点で公開されている公式サイトは以下です。
経営自己診断システム

経営自己診断システムの使い方

使い方はシンプルです。分析結果の用語解説も用意されており、専門知識がなくても経営分析できます。では順を追って、使い方を見てみましょう。

(1)決算書の内容を入力

まずは入力画面を開き、基本情報と自社の財務データを入力します。

基本情報は、業種や従業員数、資本金といった簡単な内容のみ。決算書は、貸借対照表や損益計算書などの主だった項目を入力します。なお用語に関しては、入力項目についてページに分かりやすく書かれています。

全て入力できたら、画面下の「診断」をクリック。診断結果が表示されます。

(2)診断結果を確認する

診断結果を確認します。このシステムでは、次の3つが確認できます。

(1)総合分析結果

総合分析結果で表示されるのは、「収益性」「効率性」「生産性」「安全性」「成長性」の5項目。この結果を見ることで、業種平均と比較した自社の強みと課題が一目でわかります。

出典:山梨県信用保証協会「経営自己診断システム」

もしも事前の想定と異なる結果が出た場合、見落としていた要素があるかもしれません。想定外の結果が出た場合は、次に紹介する個別指標を精査してみてください。

(2)個別指標分析

先ほどの5項目は、さらに27の指標に分かれます。

個別指標分析ではこれら27の指標に関して、自社の経営状態を同業他社と比較することができます。

出典:山梨県信用保証協会「経営自己診断システム」

27の指標は、それぞれ以下のものです。

■収益性
売上高総利益率/売上高営業利益率/売上高経常利益率/総資本営業利益率/総資本経常利益率/総資本償却前経常利益率/インタレスト・カバレッジレシオ/債務償還年数

■効率性
総資本回転率/売上債権回転日数/棚卸資産回転日数

■生産性
一人当たり売上高/一人当たり有形固定資産額/一人当たり経常利益

■安全性
自己資本比率/流動比率/当座比率/固定長期適合率/減価償却率/手元現金預金比率/借入金月商倍率/借入金依存度/預借率/売上高支払利息割引料率

■成長性
前年比増収率/総資本回転率増減/自己資本比率増減

各指標の詳細については個別指標の解説一覧に詳しく記載されていますので、あわせてご確認ください。

なお各指標は、経営戦略や会計方針の影響で「一見、悪く見える」場合もあります。あくまで目安として活用するようにしてください。

(3)倒産リスク分析

倒産リスク分析では、デフォルト企業や業界標準との比較によって、自社の倒産リスクが表示されます。

出典:山梨県信用保証協会「経営自己診断システム」

倒産リスクは、「安全ゾーン」「警戒ゾーン」「危険ゾーン」の3段階。あわせて点数も表示されます。

ただし点数に一喜一憂せず、10の指標をしっかり確認しましょう。デフォルト企業を下回る指標があれば、問題がないか確認することをおすすめします。

(3)PDFでダウンロード

「診断結果をPDFで確認する」ボタンをクリックすれば、診断結果のダウンロードも可能です。

出典:経営自己診断システム「操作方法」

たとえば、決算後に診断してPDFにしておけば、「金融機関や保証協会からどのように見られるか」の手がかりを得ることができます。また社内で経営会議を行う際、資料としても活用可能です。

まとめ

中小企業自己診断システムは、信用保証協会などが利用するCRDデータの業界平均と自社を比較できるツールです。なおかつ「自社の状況が金融機関からどのように見えているか」「倒産企業と比べてどうか」なども診断できます。有効活用して経営改善につとめましょう!

気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。