老朽化した賃貸物件を改修したい、再生して活用したい、だけど十分な手元資金がない……そんな不動産賃貸業者の背中を押してくれるのが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)の「企業活力強化資金」です。
空き家・空き店舗の改修を行う場合、「耐用年数の1/2を経過・一定の空室あり」などの条件を満たすと、最大7200万円の融資を受けることができます。空室や家賃の下落でお悩みの事業者や、再生を得意とする事業者は、活用を検討してはいかがでしょうか。
企業活力強化資金とは?
企業活力強化資金は、政府の重点政策に合致した投資を行う際に使える融資制度です。今回ご紹介する老朽化した賃貸物件の改修(「空室等対策関連」)の他、「キャッシュレス決済の導入」や「脱炭素化の取り組み」なども対象です。
老朽化した賃貸物件の改修を行う不動産賃貸業者は、次のような融資を受けることができます。
・返済期間・・・・・・・・・20年以内(うち据置期間2年以内)
・融資限度額・・・・・・・7,200万円(うち運転資金4,800万円)
※用途は設備資金のみ。
賃貸住宅の取得資金を日本公庫から借りる場合、通常は10年が限度。ところがこの制度を利用することで、20年に伸ばせる可能性があり、事業の収支を大幅に改善することが可能です。
令和4年(2022年)12月14日時点で公開されている公式サイトは以下です。
企業活力強化資金の活用方法
活用できるケースはさまざまです。
(1)「空室」や「家賃の下落」対策に
不動産賃貸業者にとって、悩みの種となるのが「空室」や「家賃の下落」。老朽化した物件の改修は避けて通れません。
ただし築古の物件をリフォームするには、まとまった投資が必要になります。物件の魅力を向上させて家賃の値上げを目指すなら、さらに投資額は膨らむことでしょう。
企業活力強化資金で長期資金を獲得して、“これがベスト”と思える投資を行い、望むリターンを得る道を選んではいかがでしょうか。
(2)空き家の多いボロ物件の再生に
再生を得意とする賃貸事業者は、空きの多いボロ物件の再生に活用できます。こうした物件の再生に成功するときわめて高い利回りを実現できますが、融資の獲得がなかなか困難です。企業活力強化資金は、再生事業者の強い味方になる可能性があります。
(3)新たな不動産の取得にも!
企業活力強化資金は、老朽化した賃貸用不動産の取得にも使えます。手持ちの不動産を増やし、積極経営に打って出たいと考えているオーナーにとっても、大事な足がかりとなる制度と言えるでしょう。
融資を受けるための条件
物件が主に次の条件を満たしていることが、融資を受けるために必要です。
(1)耐用年数の1/2を経過している
(2)空家等対策計画を策定した市町村の区域内にある
(3)一定の空室が生じている
それぞれについて見てみましょう。
(1)耐用年数の1/2を経過している
まずは「耐用年数の1/2を経過している」ことが条件です。
例えば、木造(耐用年数22年)は11年以上、鉄筋コンクリート(耐用年数47年)の場合は23.5年以上を経過した物件が対象となります。
(2)「空家等対策計画」を策定した市町村の区域内にある
所有物件がある市区町村が、「空家等対策計画を策定している」ことも条件です。
空家等対策計画とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」第6条に基づき、各市町村が策定している計画のこと。国土交通省の最新発表によれば、約8割の市区町村が計画を策定しています。かなりの確率で、この条件はクリアできることでしょう。
(出典)国土交通省「空き家対策に関する計画 8割の市区町村で策定!」
ただし、対象エリアや物件などは、自治体によって異なるので注意が必要です。
<対象エリア>
東京都の豊島区や江戸川区のように、市区町村内の全域が対象となるケースもあれば、対象エリアが限定される場合もあります。
<対象物件>
アパートも対象に含む場合や、対象外となる場合があります。
まずは「〇〇市+空家等対策計画」などのキーワードで検索して、条件をご確認ください。
(3)一定の空室が生じている
もう一つ「一定の空室が生じている」ことも条件です。
具体的には、「入居率が75%以下の月」が、「最近6カ月のうち3カ月以上」の場合、対象となります。
入居率は、月末時点の入居個数を、対象物件の総戸数で割って算出してください。
企業活力強化資金の実績
企業活力強化資金を活用するには、日本政策金融公庫による審査があります。各支店の中小企業事業窓口にお申し込みください。
令和3年度末時点の実績は、
・貸付実績額・・・・・・・・・6億8300万円
・貸付件数・・・・・・・・・・・33件
※いずれも累計
となっています。築古空き家の再生は元々、
・融資がつきにくい
・ついても短期(最大10年)で、収支の確保が難しい
・高い金利(年率約4%~)のノンバンク融資が中心
といったことがハードルとなっていました。ところが企業活力強化資金であれば、
・空き家再生を主な対象としている
・最大20年の長期融資が可能
・日本公庫基準(年率1.48%~)の低金利
といった特徴があります。住宅を再生する事業者にとって、非常に魅力的な商品と言えるでしょう。
まとめ
企業活力強化資金は、不動産賃貸業者にとって非常に魅力的な融資制度です。ただし国土交通省の資料によると、制度は令和5年度末までとのこと。期限があるので、検討はお早めにされることをおすすめします。
支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。