賃貸のための新築物件を建てるにあたり、連帯保証人が見つからない、短い融資年数しか提案してもらえない……融資でお困りのオーナーも多いのではないでしょうか。
そこで活用したいのが、首都圏不燃建築公社(以下、不燃公社)の融資保証事業。一定の保証料を支払うことで不燃公社が連帯保証人となり、最長35年の融資への足がかりが得られます。使える融資や条件、保証料額などを紹介します。
首都圏不燃建築公社とは?
首都圏不燃建築公社(以下、不燃公社)は、昭和36年(1961年)に設立された公益法人(現在は一般財団法人)です。
目的としているのは、首都圏および周辺地域の建造物を不燃化すること。そのために、市街地再開発や防災街区整備、賃貸住宅のリフォーム・リノベーション事業などを手がけています。
さらに不燃公社が行っているのが融資保証事業です。
上図にある通り、不動産賃貸事業者が賃貸住宅の建設資金を借り入れする際、不燃公社に一定の保証料を支払うことで、不燃公社が連帯保証人の役割を果たし、債務保証を行ってくれます。
個人名義で事業を営む家主は、「連帯保証人を探そうと思っても適切な身内がいない」「いざという時に配偶者を巻き添えにはできない」などの理由で、二の足を踏む方も少なくないでしょう。そのような場合に不燃公社の保証を検討してみてはいかがでしょうか。
不燃公社を利用するメリット
不燃公社を利用するメリットを見てみましょう。
メリット(1)保証人を探す必要がない
先述した通り、不燃公社が連帯保証人となります。そのため融資を受けるにあたり、保証人を探す必要性がありません。
メリット(2)保証料の返戻あり・なしが選べる
不燃公社のサポートを受けるためには、一定の保証料が必要です。ただし状況に合わせて、返戻「あり」と「なし」どちらかの方式を選ぶことができます。
・返戻あり・・・・・繰り上げ返済すると、保証料の一部が返ってくる。
・返戻なし・・・・・繰り上げ返済時も返戻はないが、保証料が低め。
「先祖代々の土地である」などの理由でずっと保有し続けることが確定しているなら「返戻なし」を、資産の組換も念頭に置いているなら「返戻あり」を選択するのがよいでしょう。
メリット(3)実績も豊富
不燃公社は、60年の歴史を通じて蓄積された知識とノウハウをもとに事業を行っています。融資に関しても、次の通り豊富な実績があります。
<融資保証事業の実績>
・件数・・・・・・・・・・・・11,947件
・戸数・・・・・・・・・・・・198,734戸
・事業費・・・・・・・・・・2,545,319百万円
※令和5年(2023年)1月現在。
このように、約1万2千件もの実績があり、戸数に換算すれば約20万戸にも上ります。これまでの総事業費は2兆5千億規模と、豊富な実績を誇ります。
対象となる融資
不燃公社がサポートするのは、「住宅金融支援機構」もしくは「不燃公社が提携している民間金融機関」の融資を利用する場合です。
(1)住宅金融支援機構
住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)では、賃貸住宅建築関連として次の3種類の融資を用意しています。
・子育て世代向け省エネ賃貸住宅建設融資
・サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資
・まちづくり融資(長期建設資金)
それぞれについて見てみましょう。
(1)子育て世代向け省エネ賃貸住宅建設融資
子育て世代向け省エネ賃貸住宅建設融資は、子育て世帯に必要な広さがあり、高い省エネルギー性能をもつ賃貸住宅を建てる際に使える融資です。
<主な条件と内容>
子育てに必要な広さと、省エネ性能の要件がありますので、追加コストと収益性を評価した上で、計画に合うならば利用を検討してみてはいかがでしょうか。
(2)サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資
サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資は、高齢者が安心して暮らし続けるための条件を備えた賃貸住宅を建てる際に使える融資です。
<主な条件と内容>
専有面積と設備の制約がありますので、収益性を評価した上で、計画に合うならば利用を検討してみてはいかがでしょうか。
(3)まちづくり融資(長期建設資金)
まちづくり融資(長期建設資金)は、市街地の狭小地域などに建替えにより賃貸住宅を建設する際に使える融資です。
<主な条件と内容>
事業要件が建替に限定されているので、建替を検討する方は、詳細の条件を検討してみるとよいでしょう。
(4)共通事項
これら3つに共通するのが、不燃公社のサポートを受ける際の保証料と、金利引き下げです。
(1)保証料
不燃公社の保証を受ける場合、保証料は次の通りです。保証料は「年率」ではなく、全期間を通した料率となっています。信用保証協会の保証料と比較すると、相対的に低いと言えます。
▼保証料返戻「なし」の場合
▼保証料返戻「あり」の場合
信用保証協会と異なり、最初の5年で返戻率が大幅に下がることが特徴的です。繰り上げ返済しても保証料はあまり戻ってこないので、「売却して一括償還した場合のおまけ程度」と考えるとよいでしょう。
(2)金利引き下げ
令和5年(2023年)10月以降の申し込み分より、一定の条件を満たした場合に、金利が下がります。
対象となるのは、長期優良住宅または機構の定めるZEH基準に適合する場合。当初15年間は年0.2%の金利引き下げが行われます。
詳しい条件や内容については、金利引下げ制度等のご案内をご覧ください。
(2)不燃公社提携の民間金融機関
不燃公社では、次の民間金融機関と提携しています。
※令和4年(2022年)4月1日現在
これらの金融機関が提供する融資に申し込む場合、不燃公社の融資保証を受けることができます。
融資条件や金利は、金融機関ごとに異なります。詳しくは不燃公社の賃貸経営支援部にお問い合わせください。連絡先は、不燃公社ホームページのアクセス・お問い合わせでご覧いただけます。
不燃公社に支払う保証料は、次の通りです。
▼保証料返戻「なし」の場合
▼保証料返戻「あり」の場合
全体的に、住宅金融支援機構への融資と比べて保証料率が低く設定されている点が特徴的です。
まとめ
賃貸住宅を新築する資金の借入に対して、保証をしてくれる不燃公社。これにより、プロパー融資を受けづらい零細事業者でも好条件・長期間での融資を受けられる可能性が高まります。気軽に提携金融機関に問い合わせ、条件について打ち合わせてみましょう。
気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。