コロナ禍の中、最大1億円の大型補助金として登場し、大きな注目を集めた事業再構築補助金。令和3年(2021年)度補正予算(6,123億円)が成立し、令和4年(2022年)度も3回をめどに公募が行われる予定です。
ただし、新年度の第6回公募からは、内容の見直しが行われます。全体としては“条件が厳しくなる”と言って良いでしょう。しかし、売上が減少していない事業者に道が開かれる「グリーン成長枠」が創設されることは注目に値します。
主な変更点について紹介します。
事業再構築補助金とは?
コロナ禍で売上が減少した、この機会に思い切って業務転換したい、事業を再構築したい……そんな企業が増えています。
事業再構築補助金はその名の通り、企業の事業再構築を促す補助金です。
新分野展開や事業転換、業態転換、事業再編には資金がかかります。そうした挑戦に対して、第1~5回と同様に補助がなされます。コロナ禍をチャンスに変えたい中小企業にとって大きな支えとなるでしょう。
ただし新年度からは内容の見直しが行われ、要件や上限額が変わります。100人以下の事業者は上限額が下がるため、より多額の補助を受けたいなら、令和3年(2021年)度最後となる第5回(※)にチャレンジすることをおすすめします。
※第5回の公募は、令和4年(2022年)1月中に始まる予定です。
なお、第6回からは、売上減少要件がなく、最大1.5億円の補助が受けられる「グリーン成長枠」が追加されます。
事業再構築補助金の公式サイト
令和4年(2022年)1月13日時点で公開されている公式サイトは以下です。
令和4年(2022年)度から、一体何が変わる?
では、第6回からは何が変わるのでしょうか。主な変更点を紹介します。
(1)売上高10%減少要件の緩和
事業再構築補助金を受けるためには、コロナ禍によって売上高が減ったことが条件です。
どの時期に、どれぐらい減れば対象になるのか、その条件が次の通り変わります。
〈Before〉
①2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること。
②2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して5%以上減少していること。
↓
〈After〉
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること
このように、以前はコロナ前後を比較して「10%」以上減少した期間があり、さらに2020年10月以降も売上が減少している必要がありました。ところが第6回からは、2020年4月以降のいずれかの期間で「10%」以上減少していれば対象になります。
(2)通常枠の補助上限額の見直し
通常枠に関しては、上限額が変更になります。
従来の上限額は、「4,000万円・6,000万円・8,000万円」の3種類でした。ところが第6回からは「2,000万円・4000万円・6,000万円・8000万円」の4種類に変わります。
上限額の基準となるのは「従業員が何人いるか?」という点。具体的には次の通りです。
例えば従来、従業員数が「21人~50人」の企業であれば、最大6,000万円の補助金受け取ることができました。ところが第6回からは、最大4,000万円となります。
上限額が下がるのは、「21人~50人」の企業だけではありません。従業員100人以下の企業はすべて上限額が下がることになります。影響を受ける事業者様は、第5回での採択を目指すことをおすすめします。
(3)補助対象経費の見直し(建物費・研修費)
事業を再構築するにあたって、かかった建物費や研修費は、経費として認められます。ただし第6回から、条件が次のように変わります。
〈建物費〉
対象は、原則として改修の場合のみ。新築の場合には一定の制限あり。
〈研修費〉
補助対象経費総額の1/3を上限とする。
建物の新築にかかる制限は、今のところ不明です。具体的な内容(例えば、建て替えが対象となるか否かなど)については、後日発表される公募要領の発表を待つことになります。建物の新築や建替を検討される事業者様は、第5回の採択を目指すことをおすすめします。
新設される「回復・再生応援枠」「グリーン成長枠」
新しく登場する枠が2つあります。
(1)回復・再生応援枠の新設
従来は、緊急事態宣言により深刻な影響を受けた事業者を対象に、「緊急事態宣言特別枠」が設けられていました。この 「緊急事態宣言特別枠」 が廃止され「回復・再生応援枠」がつくられます。
回復・再生応援枠は、依然として業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を支援するためのもの。
最大1,500万円まで、中小企業については補助率が3/4(通常枠は2/3)に引き上げられます。
回復・再生応援枠の対象となるには、主な条件として「令和3年10月以降のいずれかの月の売上高が対令和2年、または令和元年同月比で30%以上減少していること」が挙げられます。
実質的な内容は、令和3年(2021年)の「緊急事態宣言特別枠」と変わりません。このため当社では、「令和4年度に緊急事態宣言がなされるかどうかが不明であるため、名称を変更したのではないか」と推測しています。
(2)グリーン成長枠の新設
従来は特別枠として、中小企業から中堅企業へと成長する事業者向けに「卒業枠」が、海外展開によってV字回復を目指す中堅企業向けに「グローバルV字回復枠」が用意されていました。
これらが廃止となり、新たに登場するのが「グリーン成長枠」です。
グリーン成長枠とは、グリーン分野での事業再構築を目指す事業者を対象にしたもの。最大1.5億円という、かなり大きな支援が受けられます。さらにグリーン成長枠は、“売上高10%減少要件”が課されないのも特徴です。
また、令和3年(2021年)の公募にはなかった「成長投資への補助」という側面が新たに追加されます。これにより、業績好調で成長を目指す事業者様に、申請の可能性が開かれたことは注目に値します。
なお対象となるのは、政府のグリーン成長戦略「実行計画」に掲げられた分野。具体的には、次の14分野が対象となります。
グリーン成長枠の要件は、例えば「補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加」などハードルが高いものの、補助額が大きいのが特徴です。
さらに、「2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと」が求められますので、後日発表される公募要領をしっかり確認する必要がありそうです。
まとめ
第6回から、基本的に条件は厳格化します。できれば第5回で申請するほうが、より有利な条件で補助を受けられる可能性が高まるでしょう。
とはいえ売上減少要件がない「グリーン成長枠」新設は見逃せません。成長企業は、今後発表される公募要領の詳細に注目して、チャンスを生かすことを検討したいところです。
気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。