節税にもなる「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」とは?

毎月積立をしておくと、取引先が倒産したときにお金を借りられるのが、国運営の「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」です。

しかもこの制度は、賢く積み立てることで節税効果が期待でき、貸付制度を使えば資金繰りの助けになるのも魅力。要件を満たすなら絶対加入すべき商品です。特徴やメリット、注意点を紹介します。

経営セーフティ共済とは?

中小企業にとって、取引先の倒産は大きな打撃になりかねません。そこで国の機関である中小機構(正式名称:独立行政法人中小企業基盤整備機構)が用意しているのが「経営セーフティ共済」です。

経営セーフティ共済は別名「中小企業倒産防止共済制度」とあるように、中小企業の連鎖倒産を防ぐためにつくられた制度。 50年近い歴史があり、最新データ(令和5年3月末現在)によれば、約62万の企業や事業者などが在籍しています。

経営セーフティ共済で積立をしていると、取引先の倒産時は借入れが可能。掛金が全額所得控除できるため節税効果も高く、なにより国運営という安心感のある制度です。

ただし効果を大きくするためには、掛金の金額設定やタイミングなどが重要です。有効活用するために知っておきたい情報を紹介します。

令和6年(2024年)4月3日時点で公開されている公式サイトは以下です。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)

経営セーフティ共済の特徴

まずは主な特徴を3つ紹介します。

特徴(1)掛金は加入後も「増減OK」

掛金月額は5,000円から20万円まで5,000円単位で自由に設定できます。しかも掛金は、加入後も増減可能。総額が800万円に達するまで積み立てることができます。

ただし逆に言えば、総額800万までしか積み立てることができません。この枠内をいかにうまく使うかがポイントです。詳しくは後ほどお伝えします。

特徴(2)掛金全額を「損金」または「経費」扱いできる

経営セーフティ共済は、法人と個人事業主どちらも加入できます。確定申告の際は掛金を、

・法人・・・・・・・・・・・・・・・損金に算入

 

・個人事業主・・・・・・・・・必要経費として計上

することが可能です。

特徴(3)無担保・無保証人で借入可能

経営セーフティ共済は、別名「倒産防止共済」とあるように、取引先が倒産した際に借入れが可能です。その額については、次の2つのうち「少ない方」となります。

・回収困難となった売掛金債権などの額

 

・納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)

たとえば10万円×24か月積み立てていた場合、掛金総額は240万円。つまり最大で2,400万円借りることが可能です。

しかも無担保・無保証人でOK。自宅などの追加担保を抵当に入れることなく、危機をしのぐことができます。

なお、借入れが受けられる取引先の倒産とは、次の場合を指します。

・法的整理
・取引停止処分
・でんさいネットの取引停止処分
・私的整理
・災害による不渡り
・災害によるでんさいの支払不能
・特定非常災害による支払不能

ちなみに「夜逃げ」は対象外となっています。

経営セーフティ共済を活用するメリット

続いて主なメリットを紹介します。

メリット(1)節税につながる

経営セーフティ共済は「倒産防止共済」として知られていますが、税務的なメリットもあります。

先ほど特徴(2)で紹介したように、掛金全額を「損金に算入」もしくは「経費計上できる」ため、節税になるというのが大きなメリットです。

節税のためのポイントを見てみましょう。

1.利益が多い年は最大掛金に!

「今期は利益が出すぎた」という年は最大掛金(年額240万円)にするのがポイントです。

掛金は月払いもできますし、年払いも可能。決算直前に翌一年分をまとめて払えば、最大240万円を経費化できるので、節税効果が高くなります。

2.法人は「年800万円」が境目

法人の場合、税引前当期純利益が年800万円を超えるか超えないかも、大事なポイントです。

経営セーフティ共済は、積立限度額が決まっています。かつては320万円でしたが、令和5年(2023年)より800万円に引き上げられました。

法人税の場合、税引前当期純利益が800万円を超える部分には、適用される税率が上がってしまいます。ですので、

・800万円を超えた期・・・・・最大額の年240万円を掛ける

 

・800万円以下の期・・・・・・・最低額の年6万円にとどめておく

とすれば、より大きな節税効果が期待できるということです。

メリット(2)ピンチのときは「解約手当金」として戻ってくる

事業をしていると、何年かに一度はピンチが訪れるもの。そういうときに解約すれば、「解約手当金」として返ってくるので大きな助けとなります。

1.40か月継続していれば「全額」

自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻ります。そして40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります。

たとえば月10万円×60か月で、600万円納めていたとします。もちろん元は自らのお金。とはいえ、ピンチのときに600万円ものキャッシュが入る意味は、大きいのではないでしょうか。

2.「赤字」の年に解約を!

いざというときの助けになる解約手当金ですが、解約するならタイミングが重要です。

というのも解約手当金は利益になるため。利益に対して税金がかかってしまうと目減りして、節税してきた意味も薄くなってしまいます。

具体的には“赤字が出た年”または少額の黒字となった年に解約するとメリットがあります。

たとえば既に600万円積み立てていて、700万円の赤字が出たとしましょう。そうなると相殺されて、100万円の赤字になります。赤字に税金はかかりませんから、税金はゼロ円で済むということです。

3.再加入もできる

経営セーフティ共済は、一度解約しても再加入が可能です。また一から積立すれば、同じように節税もでき、いざというときは解約もできるということです。

※ただし令和6年(2024年)からは制度改正により、解約後2年間は損金算入ができなくなりますので、ご注意ください。

メリット(3)倒産時以外でも「貸付制度」が利用できる

経営セーフティ共済は、中小企業の倒産防止のための共済です。

ところが納付月数が12か月に達していれば、取引先が倒産していなくても「一時貸付金制度」が利用できます。その金額は、30万円を最低限度として5万円単位です。

たとえば、掛金総額800万円の場合は、解約手当金の95%(最大760万円)が借入れ可能。12か月しか納めていない場合でも、「掛金総額×75%×95%」を借りることができるという手厚い内容です。

事業者には「資金繰りが苦しい」「臨時資金が必要」といった場面があるはず。そうしたときに資金調達の選択肢が増えるのは、大きなメリットではないでしょうか。

なお「いくら借りられる?」という点については、中小機構「一時貸付金制度」ページに詳しく記載されていますので、ご確認ください。

経営セーフティ共済の注意点

メリットが多い経営セーフティ共済ですが、知っておきたい注意点もあります。

注意点(1)積立を続けなくてはいけない

経営セーフティ共済は積立制度です。そのため一度始めると、ずっと積立をしなくてはいけません。

ただし経営がしんどいときには、月額5,000円に下げれば年間6万円。これぐらいならあまり負担もかからないのではないでしょうか。

しかも赤字が大きいときは、解約可能です。40か月以上積み立ており、赤字の年に解約すれば、先ほど解説した通り全額返ってきます。そのため損をすることはありません。

注意点(2)事業開始後1年以内は入れない

この制度は、法人も個人事業主も「事業を開始してから1年経っている」ことが加入の条件です。そのため1年以内経ってからしか入ることができません。

ただし1年さえ経てば加入できますし、複数の会社を経営している場合、全社加入することもできます。

注意点(3)損金処理すると銀行評価が下がる

掛金を損金処理すると節税効果は期待できるものの、銀行評価が下がる可能性があります。

銀行評価を下げないためには損金処理するのではなく、法人税申告書で調整する方法がおすすめです。

その場合は貸借対照表の「資産の部」に「保険積立金」として計上します。このように資産計上を行うことで、決算書上において会社の純資産が増えることになり、融資の審査に有利に働く可能性が大きくなります。

ただしこの場合、法人税の申告書上で調整が必要になります。

・特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書(別表10(7))
・「適用額明細書」への記入(租税特別措置法の条項、区分番号、適用額)

これらの書類に必要事項を記入し、確定申告書に添付するとともに、損金算入による税務調整が必要となります。

経営セーフティ共済の申し込み方法

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入するには、「オンライン受付」「窓口受付」の2種類があります。

オンライン受付

従来は窓口受付のみでしたが、令和5年(2023年)9月からオンライン受付もスタートしました。ただし「GビズID」が必要で、書類は窓口に提出する必要があります。

(1)「GビズID」とは?

GビズIDと は、一つのアカウントで、複数の行政サービスにアクセスできる認証システムのこと。デジタル庁のGビズIDページで作成可能です。

(2)窓口一覧

中小機構が業務委託契約を結んでいる団体、または金融機関の窓口で手続きを行います。

(引用)共済サポートnavi「加入窓口」

なお代理店は毎月更新され、現時点での最新情報は代理店(金融機関)一覧 【令和6年3月8日現在】に掲載されています。申し込みを行う際は、必ず最新データをご確認ください。

(3)手続きの流れ

申込ページでGビズIDでの認証手続きを行うと、必要事項が入力できる画面が表示されます。

受付後メールが送られてきて、申請内容をPDFでダウンロードできる状態になります。これらをダウンロードして印刷し、窓口に提出。資格審査後(40~60日)に加入が成立します。

詳しくは、経営セーフティ共済オンライン 加入申請書作成サービスをご覧ください。

窓口受付

先ほども紹介した、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体または金融機関が窓口となります。

(引用)共済サポートnavi「加入窓口」

代理店は毎月更新され、現時点での最新情報は代理店(金融機関)一覧 【令和6年3月8日現在】に掲載されています。申し込みを行う際は、必ず最新データをご確認ください。

なお申し込みを行う際は、書類の用意が必要です。立場や前納の有無などによって、必要書類が変わります。

経営セーフティ共済 加入申込手続きナビゲーターページで条件を選択すると、必要な書類が表示されますので、ご確認ください。

まとめ

経営セーフティ共済を有効利用すれば、課税の繰延効果を享受することができます。ぜひ検討してみてください。

なお、同じく節税効果が高い制度として小規模共済があります。別記事「節税メリット大!オーナー社長・個人事業主向け「小規模企業共済」とは?」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください

支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。