「便利な会計給与システムを導入したい」「顧客情報をクラウドで一元管理したい」。そんな中小企業や小規模事業者が活用したいのが「IT導入補助金」です。
補助額は30万円から450万円。ルーティン業務を効率化させるパッケージソフトや、顧客情報の管理に役立つシステム導入などに活用できます。
IT導入補助金の概要や補助率、申請のポイントなどを紹介します。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、「単純作業の繰り返しが多くて時間がとられる」「情報管理が各担当者のパソコンにバラバラに保存され、集約できていなくて効率が悪い」といった課題解決につながるITツールの導入をサポートする補助金です。例えば過去の導入例として、こんなものが紹介されています。
・給与・勤怠管理システム(卸・小売業)
・宿泊予約サイト一元管理システム(宿泊業)
・建築3次元CAD(建築業)
・訪問介護支援システム(介護業)
・クラウド顧客管理システム(士業)
・電子カルテ対応レセプトコンピューター(医療)
・RPAツール(製造業) (※)
※RPAとは、“Robotic Process Automation”(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略。人間による非効率な手作業を、ロボットが自動で行う仕組みや概念のこと。
ポイントは、ITツールを使うことで生産性が向上し、売上アップにつながること。
「作業時間が減って営業担当を増員できる」「より質の高いサービスが可能になる」といったことが実現するなら、補助金の対象となります。
IT導入補助金の公式サイト
令和3年(2021年)4月12日時点で公開されている公式サイトは以下です。
(参考)IT導入補助金2021
なお公式サイト内で、飲食や宿泊、卸・小売、運輸、医療など、業種ごとのおすすめツールが紹介されています。ぜひ参考にしてください。
(参考)IT導入補助金2021「業種別 お悩み解決ITツール機能」
IT導入補助金の対象
この補助金の対象は「中小企業」「小規模事業者」です。
(1)中小企業
中小企業の定義は、業種によって異なります。宿泊業や建設業、医療法人や学校法人なども対象です。
(2)小規模事業者
小規模事業者の定義は、次の通りです。
IT導入補助金の補助額・補助率
IT導入補助金は、大きく分けて4種類。「A類型」「B類型」「C類型」「D類型」があります。
・A類型とB類型・・・・・・・通常枠
・C類型とD類型・・・・・・・特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)
特別枠で対象となるのは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者です。
それぞれの補助額や補助額は次の通り。
(1)A類型
補助率1/2以内、30万円~150万円。
(2)B類型
補助率1/2以内、150万円~450万円。
(3)C類型
補助率2/3以内、30万円~450万円。
(4)D類型
補助率2/3以内、30万円~150万円。
注目したいのが、特別枠のC類型とD類型。優先的に支援すべく、通常枠よりも補助率が高く設定されています。通常枠が「1/2以内」であるのに対して、特別枠は「2/3以内」が経費として認められます。
補助対象となる経費は?
IT導入補助金で対象となるのは、次の経費です。
・通常枠(A・B類型)・・・・・・・・・ソフトウェア費、導入関連費
・特別枠(C・D類型)・・・・・・・・・ソフトウェア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費
大きな違いは、特別枠のみパソコンやタブレットなどのレンタル費も経費として認められること。
ただし、「業務の非対面化につながるITツール」であることが条件です。例えば、テレワーク環境の整備に必要なものであれば、経費として認められます。
経費のルールについてはやや複雑で、多くの事業者が頭を抱えます。
例えば、会計ソフトは経費の対象ですが、「請求書作成機能のみ」といった限定的なソフトの場合は対象外。ホームページ制作ツールやブログ作成システムなど、CMSで制作した簡易アプリケーションも対象外です。
審査通過のための申請のポイント
IT導入補助金は、採択率が公表されていません。ただしネット上の情報を見ていると、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、令和2年(2020年)は厳しい結果となったようです。
IT導入補助金は、他の補助金と比べて記入欄が少なめで、負担が少ないのが特徴です。その反面、だからこそ限られた情報の中で「いかに導入予定のITツールが、業績にプラスになるか?」を、適切に伝えなくてはいけません。
また、自社に合った枠を選ぶことも重要です。特別枠のほうが好条件だからと申請しても、条件を満たしていなければ当然ながら通りません。
特に、申請書で重要となるのが「その他(フリー記入)」欄。最大255文字以内で、導入による効果をアピールできる貴重な部分です。
・導入するITツールが、業種・業態に適合していること
・導入するITツールによって、経営課題が明確に解決できること
・導入するITツールによって、労働生産性の向上が見込めること
・導入するITツールによって、業務プロセスが改善できること
といった点を意識して、申請書を仕上げましょう。
まとめ
IT導入補助金は、会計給与システムや顧客管理システムなどの導入に活用できる制度です。日々の業務負担を減らしたいと思いながら、導入コストで二の足を踏んできた事業者の背中を押してくれる存在です。
ただしネックとなるのが、コロナ禍によって低調な「採択率」と、どこまで対象となるのかが判断しづらい「経費」。チャンスを生かすためには、専門家の活用を視野に入れるのも一つの選択肢です。