日本経済を支える中小企業。各社が目の前にある経営課題を解消し、力を十分に発揮することが、全体として日本経済の活性化につながることは言うまでもありません。
そこで中小企業庁では、自社だけでは解決できない課題を抱える中小企業や小規模事業者を対象に、専門家派遣事業「中小企業119」制度を設けています。概要を紹介します。
中小企業の悩みに応える「中小企業119」
「ミラサポ専門家派遣制度」の進化版
近年コロナ禍によって、中小企業を取り巻く環境や働き方が大きく変わりました。「人材の強化」「売上・シェア拡大」といった経営課題を解決しようにも、突破口が見えず悩む事業者も多いことでしょう。
そんなとき、頼りになるのが専門家。確かな知識や経験をもとにしたアドバイスを受けることで、解決の糸口が見えることは少なくありません。
そこで中小企業庁では従来、それぞれの課題に対応できる専門家を派遣し、解決を支援するため、ミラサポ専門家派遣制度を設けていました。そして、運用面やシステム面を改善し、令和3年(2021年)度から始まったのが「中小企業119」です。
格安で各種専門家に相談できる
後述する通り、無料もしくは最大17,600円という費用負担で、専門家のアドバイスを受けることができるのが、この制度の特徴です。
しかも専門家は全員、中小企業支援機構が指定する支援機関の承認を受けています。「専門家にアドバイスを頼みたいけれど、一体誰に頼めばいいのか分からない」という事業者にとって、最初の相談先として悪くないでしょう。
令和4年(2022年)8月22日時点で公開されている公式サイトは以下です。
「中小企業119」専門家派遣のポイント
利用するにあたって、知っておきたい主なポイントを見てみましょう。
(1)全国各地に支援機関がある
全国各地に、商工会や商工会議所、よろず支援拠点、金融機関などの支援機関があります。これらの機関が窓口となり、専門家を派遣してもらう仕組みです。
どこに、どのような支援機関があるかは、中小企業119「支援機関を探す」で簡単に検索できます。
なお、令和4年(2022年)8月22日時点で、支援機関の数は1956件。気になる方は、まずは最寄りの支援機関を探してみてください。
(2)初回無料、最大17,600円
最大5回まで相談できます。費用は次の通り。
このように初回は無料、最大でも17,600円の負担で専門家のアドバイスを受けることができます。
この支援は「3時間以上」と決まっています。みっちり3時間以上も相談でき、それでいて無料もしくは最大17,600円という、超低額のありがたい制度です。ぜひ活用をご検討ください。
(3)幅広い分野のスペシャリスト
地域の支援機関を通じて、専門家の派遣が行われます。登録している人は、次のいずれかに該当しています。
・中小企業診断士や税理士、公認会計士、弁護士など公的資格を持っている
・会社などの管理者または技術者などとして、10年以上の実務経験がある
・経営診断や販路開拓、商品開発などの中小企業者など支援に3年以上の経験がある
または相応の実績があると認められる
・技能に関する指導や教育機関に所属し、指導や教育、研究に5年以上の経験がある
いずれも専門的な知識や技術、技能を持っており、実務経験もあるスペシャリストが大半です。なお専門家は、支援機関が適切な人材をデータベースから選定します。
「中小企業119」以外の専門家派遣事業
ここまで紹介してきた「中小企業庁119」は、全国の事業者が対象で非常に使いやすい制度です。
一方、このほかにも、利用可能な事業者は限定されるものの、中小企業などをサポートする専門家派遣事業が行われています。
(1)「東京都内の事業者」向け
都内に主な拠点を置いているなら、公益財団法人 東京都中小企業振興公社が行っている専門家派遣事業も利用できます。
登録している専門家は、中小企業診断士、ITコーディネータ、社会保険労務士、公認会計士、税理士など約300人。
公社の専門家派遣事業は5種類用意されており、全て無料もしくは半額負担で利用できます。詳しくは別記事「最大8回!無料もしくは半額負担で相談できる「専門家派遣事業」【東京都】」をご覧ください。
(2)「地域未来牽引企業」向け
経済産業省では、地域経済の担い手となりうる企業を「地域未来牽引企業」として選定しています。
地域未来牽引企業に選ばれると、さまざまな支援策が受けられます。特に大きいのが、「税制支援措置のご案内について」にも書かれている税制の優遇。そしてもう一つが、専門家派遣です。
登録している専門家は、各分野のスペシャリスト。食・農業や、新素材、環境・リサイクル、医療機器・ヘルスケアなど、多彩な専門家が揃っています。
まとめ
中小企業は大企業と違って、給与水準の高い専門職を雇用するのはハードルが高くなります。しかし、どうしても専門家が必要な場面は発生します。 まずは補助を受けた派遣制度を活用し、いざというときに頼れる専門家とつながりを作っておきましょう。中小企業119も費用負担が軽いので、お気軽にご検討ください。