「工場の脱炭素化を進めよう」「事業所の屋上に、太陽光発電パネルを設置しよう」など省エネを考えている事業者は、補助金を活用すると大きなメリットがあります。
省エネは、国を挙げた取り組みです。そのため企業による省エネ対策には、さまざまな補助金制度が用意されているのです。
この記事では、経済産業省・環境省・国土交通省・自治体による、代表的な省エネ補助金をまとめました。ぜひ参考にしてください。
※令和3年(2021年)度に公募があった補助金を紹介しています。
※令和3年(2021年)8月1日現在で、令和3年度の公募期間が終わっているものは「公募期間終了」と記載しています。
経済産業省による省エネ補助金
経済産業省では、「資源エネルギー庁」が中心となり、省エネ推進のための支援を行っています。
■先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金
【公募期間終了】
代表的な補助金が、「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」です。
開始は、令和3年(2020年)度。従来「エネ合」と呼ばれた「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」の後継事業です。
ポイント
・補助額は最大15億円
・支援事業は「先進事業・オーダーメイド型事業・指定設備導入事業・エネマネ事業」
・補助対象は「EMS・特注設備・産業ヒートポンプ・高性能ボイラ」など
先進的な省エネ技術・設備が重点的に支援されるのが特長で、補助額は最大15億円。なお4つの支援事業は、複数組み合わせて申請することも可能です。
■地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金
【公募期間:令和3年(2021年)10月29日まで】
エネルギーの地産地消ができるシステムを「地域マイクログリッド」と呼びます。地域マイクログリッドを構築もしくは導入プランを作成する際に活用できる補助金です。
ポイント
・補助額は最大6億円
・補助対象は「太陽光発電設備・風力発電設備・蓄電システム」など
・導入プラン作成事業は補助率3/4以内、旅費や謝金などの経費も対象
原則として単年度事業が対象ですが、むずかしいと判断される場合は、最大2年まで申請可能です。
公式サイト「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金」
■AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金
【公募期間終了】
運輸部門における、さらなる省エネ化を支援するための補助金です。
ポイント
・サプライチェーン全体の輸送効率化や省エネルギー化がカギ
・補助額は最大5000万円
・補助対象は、「車両動態管理・予約受付・配車計画」システムなどの導入
車両動態管理システムは補助金の上限額がなく、行政の強い意思が垣間見えます。対象事業者は、この機会に導入を検討するとよいでしょう。
公式サイト「AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金」
環境省による省エネ補助金
環境省による省エネ補助金は、CO2の排出量削減を重視している点が大きな特長です。
■工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業
【公募期間終了】
日本政府は「2050 年までの脱炭素社会」達成、中期目標として2030年目標も掲げています。
これらの目標達成に向け、工場や事業場において脱炭素化に向けた取組をした場合、活用できる補助金です。
ポイント
・補助額は最大5億円
・CO2排出量削減余地の診断および「脱炭素化促進計画」の策定を支援
・「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助もあり
補助金の対象はCO2排出量50t〜3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業です。支援機関が現地調査を実施し、エネルギー使用状況の把握や改善提案などを行います。
公式サイト「工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業」
■建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業
【公募期間終了】
建築物などにおいて、大幅な脱炭素化・レジリエンス強化を進める際、活用できる補助金です。
主な事業内容は、次の通り。なおZEB(ゼブ)とは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のことです。
ポイント
・「レジリエンス強化型ZEB実証事業」は災害時に活動拠点となることが条件。補助額は最大5億円。
・「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」の補助対象は「断熱材・冷却塔・太陽光発電・蓄電システム」など。補助額は最大5億円。
・「既存建築物における省CO2改修支援事業」の補助対象は、省CO2性の高い設備機器など。補助額は最大5千万円。
地方公共団体の建物を主に想定しつつ、民間建物も補助対象となりました。公募は終了しましたが、今後も同種の補助金が出る可能性があります。
■ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
【公募期間:第5次 令和3年(2021年)8月31日まで】
【公募期間:第6次 令和3年(2021年)9月30日まで】
ストレージパリティとは、「蓄電池を導入しないよりも蓄電池を導入した方が経済的メリットがある状態」を指します。
グリーン社会の実現を目指して、再エネや蓄電池などを導入し、ストレージパリティの達成を目指す際、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金が活用できます。
ポイント
・補助額は最大2億円(1需要地あたり)
・補助対象は「太陽光発電・蓄電池・車載型蓄電池」など
・契約は「ファイナンスリース契約」も可能
2050年の脱炭素社会実現に向け、政府のグリーンイノベーションへの支援姿勢が強まっています。この機会をとらえて投資する事業者の背中を押す制度です。
公式サイト「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」
国土交通省による省エネ補助金
国土交通省による主な省エネ補助金は、断熱材などを用いた省エネ改修工事を支援し、建築物における省エネを促進する点が特長です。
■既存建築物省エネ化推進事業
【公募期間終了】
既存の建築物において省エネルギー改修工事を行う際、補助金を活用することができます。
ポイント
・対象は既存のオフィスビルなど(工場や実験施設、倉庫は対象外)
・20%以上の省エネ効果が見込まれることが条件
・バリアフリー改修を行う場合は加算あり
バリアフリー改修を行うと、2500万円または改修にかかる補助額を限度に加算されます。時代を見据え、省エネルギーとバリアフリー化の両方を検討しているなら、検討する価値はあるでしょう。
全国の自治体による省エネ補助金・助成金
都道府県や市区町村においても、事業者向けの省エネ補助金や助成金が数多く用意されています。代表的なものを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
補助金名 | 地域 | 補助額 | 公募期間 |
中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業 | 東京都 | 最大1000万円 | 令和4年(2022年)2月28日まで |
地域の多様な主体と連携した中小規模事業所省エネ支援事業 | 東京都 | 最大100万円 | 令和5年(2023年)3月31日まで |
地産地消型再エネ増強プロジェクト | 東京都 | 最大1億円 | 終了 |
充電設備導入促進事業 | 東京都 | 最大435万円 | 令和8年(2026年)3月31日まで |
スマートエネルギーネットワーク構築事業 | 東京都 | 最大4億円 | 令和7年(2025年)3月31日まで |
LED照明等節電促進助成金 | 東京都 | 最大1500万円 | ホームページを参照 |
CO2排出削減設備導入補助金 | 埼玉県 | 最大1000万円 | 令和5年(2023年)3月31日まで |
自家消費型太陽光発電等導入費補助金 | 神奈川県 | 最大3000万円 | 終了 |
中小規模事業所省エネ対策設備導入補助金 | 茨城県 | 最大100万円 | 令和4年(2022年)1月14日まで |
省エネルギー設備導入促進事業補助金 | 千葉市 | 最大100万円 | 終了 |
千葉市事業用太陽熱利用給湯システム及び蓄電システム設置費補助金 | 千葉市 | 最大100万円 | 令和4年(2022年)2月15日まで |
脱炭素社会づくり促進事業費補助金 | 栃木県 | 最大100万円 | 令和3年(2021年)11月5日まで |
中小企業設備投資支援補助金【脱炭素型】 | 東大阪市 | 最大500万円 | 終了 |
池田市太陽光発電システム設置費補助制度 | 大阪府・池田市 | 最大20万円 | 令和4年(2022年)3月25日まで |
茨木市省エネ・省CO2設備導入事業補助制度 | 大阪府・茨木市 | 最大300万円 | 令和3年(2021年)12月24日まで |
事業所向け省エネ設備等導入支援事業補助金 | 大阪府・堺市 | 最大100万円 | 令和3年(2021年)12月10日まで |
スマート社会実装化促進事業補助金 | 京都府 | 最大500万円 | 終了 |
京ーVER創出促進事業補助金 | 京都府 | 最大800万円 | 終了 |
スマートファクトリー促進支援事業補助金 | 京都府 | 最大500万円 | 終了 |
自立的地域活用型再生可能エネルギー設備等導入補助事業補助金 | 京都府 | 最大400万円 | 令和4年(2022年)1月28日まで |
中小事業者省エネ設備等導入支援事業補助金 | 兵庫県 | 最大200万円 | 令和3年(2021年)12月24日まで |
まとめ
企業活動において省エネ化が実現すれば、コスト削減につながります。原油価格の上昇や再エネ賦課金によってエネルギーコストが増大する可能性がある中、有益な施策となるでしょう。環境問題に積極的に取り組む姿勢は、企業イメージの向上にもつながることが期待できます。
補助金は毎年予算の審議が行われるので、必ず翌年も公募があるとは限りません。また、予算額に達した時点で受付が終了する場合もあります。申請可能な補助金がある場合は、早めに準備・申請することをおすすめします。