自然災害の増加やコロナ禍により、BCP(事業継続計画)に注目が集まっています。「BCPを作成し、不測の事態にも負けない強靭な事業を作りたい!」そう考える都内の事業者がぜひチェックしておきたいのが、BCP実践促進助成事業です。
例えば、自家発電装置や蓄電池、感染症対策の物品などの購入・設置が助成の対象。しかも令和3(2021年)年度は、基幹システムのクラウド化にかかる費用も経費として認められました(最大450万円)。
最大1500万円、助成率1/2(小規模事業者は2/3)の助成金が受けられる、東京都の「BCP実践促進助成事業」を紹介します。
BCP実践促進助成事業とは?
BCPとは、「Business Continuity Plan」の略で「事業継続計画」という意味です。
企業活動を行う上で、予期せぬリスクは数多くあります。例えば、地震や台風をはじめとした自然災害、火災、システム障害、事件や戦争・テロなど、“当たり前だと思っていた前提”が揺らぐ可能性はゼロではありません。
こうした緊急事態が生じた際、損害を最小限に抑え、可能な限り企業活動を止めず、止めたとしても早期復旧を目指すための方針や手順などをまとめたものがBCPです。
BCPを実践するためには、物品や設備などを購入・設置するためのコストがかかります。当事業では、そうした際にかかる費用の一部をサポートして、BCP実践を促進します。
助成額は最大1500万円。助成率は、中小企業者などは1/2、小規模企業者は2/3と特に手厚くなっています。
近年では、コロナ禍という不測の事態が発生し、企業の危機管理がますます問われています。もちろん今後も何が起きるか分かりません。事前にBCPを作成し、即応できる体制を構築することをおすすめします。
BCP実践促進助成事業の公式サイト
令和3年(2021年)8月11日時点で公開されている公式サイトは以下です。
また、現時点で発表されている今後のスケジュールは、次の通りです。
このように募集は、おおむね2か月に一度のペースで行われています。ただし、予算の都合や重点政策の変更があり得るため、いつまで続くかは不明です。利用を検討する事業者は、急いだ方が良いでしょう。
助成対象となる事業
助成対象となる事業は、次の2つの条件を満たすものです。
(1)東京・関東6県・山梨の事業所に設置する
原則として、東京都内の事業所に設置することが条件です。ただし、東京都内に本店がある場合は、
・茨城県
・栃木県
・群馬県
・埼玉県
・千葉県
・神奈川県
・山梨県
の地域にある事業所も対象となります。
(2)リスク軽減や回避を目的としている
地震や風水害、感染症拡大など、発生が予見できないリスクに対し、リスク軽減や回避を目的としていることも条件です。
例えば、次のような設備や器具物品を購入する、もしくは設置する場合は、かかった費用が経費として認められます。
中小企業や小規模事業者などは、想定外の企業活動停止が大きなダメージとなる可能性があります。助成金を活用して、自家発電装置や蓄電池などの備えをしておくことは、安心につながることでしょう。
BCP実践促進助成事業の応募要件
主な要件として挙げられるのは、次の3つです。
(1)中小企業や個人事業主などである
対象となるのは、次のいずれかに相当する事業者です。
・中小企業者
・中小企業団体
・個人事業主
・小規模企業者
それぞれについて見てみましょう。
▼中小企業者
中小企業者の定義は次の通りです。
▼中小企業団体
中小企業団体とは、次の3つを満たすことが条件です。
・中小企業等協同組合法または中小企業団体の組織に関する法律に基づく組合である。
・3者以上の組合員を有している。
・一つの敷地や建物内で業務を行っている。
▼小規模企業者
小規模企業者の要件は次の通りです。
・ 商業(小売業・卸売業)・サービス業
⇒常時使用する労働者が従業員5人以下
・製造業・その他
⇒常時使用する労働者が従業員20人以下
(2)所定のBCPを提出できる
次の3つのうち、いずれかの内容をふまえたBCPを提出できることも条件です。
・BCP 策定支援講座(ステージ1)
・事業継続力強化計画
・BCP策定支援事業
それぞれ見てみましょう。
▼BCP 策定支援講座(ステージ1)
東京都や「公益財団法人 東京都中小企業振興公社」(以下、公社)が行っている講座です。
ステージ1の目的は、BCPの基本的な理解し、作成方法を学ぶこと。およそ半日で、無料で受講できます。
▼事業継続力強化計画
防災・減災対策をまとめた計画を提出し、経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度です。
認定を受けると、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。
▼BCP策定支援事業
東京の産業基盤を維持することを目的として、東京都または公社が、セミナーや専門コンサルタントの派遣などにより、BCPの策定を支援する事業です。
平成 28 年(2016年)度以前に行われた当事業を活用して作成したBCPも対象となります。
(3)都内で実質1年以上、事業を行っている
基準日の時点において、都内で実質1年以上、事業を行っていることも条件です。
・法人・・・・・・東京都内に登記簿上の本店または支店がある。
・個人・・・・・・開業届を提出し、都内で営業している。
なお、単に登記や建物があるだけでは「都内で事業を行っている」とは認められません。
募集要項には「申請書、ホームページ、名刺、看板や表札、電話等連絡時の状況、事業実態や従業員の雇用状況から総合的に判断します」とあり、事業実態が確認されます。必要に応じて、事務局に事前確認しておくと良いでしょう。
審査通過のための申請のポイント
審査においては、「BCPの内容に妥当性があるか?」「設備を導入する必要性があるか?」といった項目から総合的に検討されます。
募集要項で、特に重視すると記載されているのが、次の2つのポイントです。
(1)経営者が自ら参画して策定された BCP であること
(2)以下の項目が記載されていること
・基本方針
・想定されるリスク
・緊急時の対応 安否確認 避難場所 取引先等の連絡
・役割分担 対策本部の設置と役割 設置の基準 地域との連携
・事業継続計画 (優先すべき重要業務の特定と目標復旧時間の設定)
・BCP 発動等の条件
・訓練 (継続的改善プロセスの明確化と訓練計画策定)
・BCP の実践に必要な物資
・緊急対応のフローチャート
・基幹システムのクラウド化を行う場合の記載事項
(1)にあるように、BCP作成においては「経営者が自ら参画していること」が求められます。
また(2)を見て分かるのが、重視される項目が多岐にわたるということです。面接審査はありませんが、必要に応じて現地調査が行われる場合もあります。
丁寧に内容をまとめた上で、経営者自身の言葉で説明できるよう備えておきましょう。
まとめ
甚大な被害が発生した東日本大震災は、企業活動にも大きな影響を及ぼしました。日本は美しく豊かな自然に恵まれていますが、同時に自然災害の多い国でもあります。近年では豪雨による土砂崩れも多発しており、もしもの場合に備えて企業活動が継続できる体制を構築しておくことは、自社を守ることにつながります。
助成金を受け取るには、申請の要件や対象経費などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。