「ドローンを活用した屋根診断サービスを始めたい」「AIを使った仮想試着サービスがあれば便利なのでは?」など、先端技術を使ったアイデア実現の後押しをするのが、革新的サービスの事業化支援事業です。
事業運営に必要な経費の1/2、助成金は最大2000万円。事業化に向けて、専門家によるアドバイスも受けられます。
革新的サービスの事業化支援事業の概要や助成率などを紹介します。
革新的サービスの事業化支援事業とは?
「革新的サービスの事業化支援事業」とは、東京都内で事業を営む中小企業や小規模事業者を対象とした助成金事業です。
近年、AIやIoTといった先端技術を活用したサービスが次々と誕生しています。例えば、企業サイトにおけるチャットボットや顔認証技術を搭載した銀行ATMなどは、身近なサービスと言えるでしょう。
少子高齢化や女性の社会進出など、現代社会はどんどん変化しています。そして生産年齢人口も減少する見込みですから、一人あたりの生産性を上げることが欠かせません。
そのためのキーポイントとなるのが、先端技術の活用です。今後もますます、先端技術を活用したサービスへの期待は高まることでしょう。
【先端技術の例】 5G、IoT、AI、ICT、ブロックチェーン、ドローン、ロボット、新材料など
そんな中、「先端技術を活用して、新サービスを始めたい!」という事業主をサポートするべく始まったのが「革新的サービスの事業化支援事業」です。
革新的サービスの事業化支援事業の公式サイト
令和3年(2021年)6月30日時点で公開されている公式サイトは以下です。
実施団体は、東京都と連携して中小企業支援を行う「公益財団法人 東京都中小企業振興社」です。現在新たな募集はありませんが、過去には2回の公募が行われました。
▼助成期間
【第1回】令和2年(2020年)9月1日~令和4年(2022年)8月31日まで(2年間)
【第2回】令和3年(2021年)1月1日~令和4年(2022年)12月31日まで(2年間)
新たな公募に際しては、東京都中小企業振興社のホームページにて発表される見込みです。新たな動きがありましたら、当サイトでもお知らせいたします。
主な支援内容
革新的サービスの事業化支援事業の支援内容は、大きく分けて次の2つです。
(1)最大2000万円の助成金
2年間で最大2000万円の助成金が受けられます。助成率は、対象経費の1/2以内です。
(2)サービス開発アドバイザーによる助言
専門家の助言を受けることができます。
サービスを事業化するにあたっては、サービスマーケティングや企業法務、資金調達などに関して、さまざまな課題と直面することもあるでしょう。事業の進捗状況に応じて、1社1年度8回まで、サービス開発アドバイザーによる助言を受けることができます。
サービス開発アドバイザーについての明記はありませんが、想定されるのは中小企業診断士や行政書士、公認会計士、税理士など各分野のエキスパートです。
革新的事業展開設備投資支援事業の対象
革新的サービスの事業化支援事業の対象となるのは、主に次の3つの要件を満たす中小企業者などです。
(1)都内で実質的に事業を行っている
対象となるには、令和2年(2020年)4月1日を基準日として、次のいずれかを満たすことが条件です。
・東京都内で、実質的に1年以上事業を行っている
・東京都内で創業し、引き続く事業期間が1年に満たない
・東京都内での創業を具体的に計画している
このように、都内で実質的に事業を行っていることが必要です。開業後1年未満では対象となりません。
(2)ビジネスモデルに優位性がある
実現したいと考えるサービスに優位性があることも条件です。次の2つのうち、いずれかを満たす必要があります。
▼要件1
東京都や公益財団法人 東京都中小企業振興公社では、さまざまな事業を行っています。
そうした既存事業において、助成対象事業のビジネスモデルが優れたものであると認められ、表彰や助成、支援を受けていることが、一つ目の要件です。
【例】
・東京都や公社が実施した「世界発信コンペティション」で、大賞、優秀賞、奨励賞又は特別賞を受賞した。
・東京都が実施する「東京都トライアル発注認定制度」(新事業分野開拓者認定制度)で認定された。
詳しくは、次のページでご確認ください。令和3年(2021年)6月現在、21の事業が対象となっています。
(出典)公益財団法人 東京都中小企業振興公社「令和2年度革新的サービスの事業化支援事業の『申請資格となる支援事業』」
▼要件2
国や自治体、公的機関などは、さまざまなビジネスプランコンテストを開催しています。
そうした大会において、助成対象事業のビジネスモデルが優れたものであると認められ入賞していることが、二つ目の要件です。
【例】
・勇気ある経営大賞
・日本サービス大賞等
(3)中小企業者・中小企業団体である
中小企業者や中小企業団体であることも条件です。
◆中小企業者
中小企業者とは、次の表に該当する事業者のこと。個人事業者も含まれます。
◆中小企業団体
中小企業団体とは、事業協同組合や協業組合などを指します。
対象となる事業
キーワードは「先進技術」です。
5GやIoT、AI、ICT、ブロックチェーン、ドローン、ロボット、新材料といった先端技術を活用し、暮らしやビジネス環境をより良くするためのサービスが対象事業です。
(出典)公益財団法人 東京都中小企業振興公社「革新的サービスの事業化支援事業」
これまでの事例には、次のようなサービスがあります。
・ソフトウェアロボットを活用した人事業務の代行システム
・小中学生向けにIoTを教える「IoT SCHOOL」サービスの展開
・AIによるアパレルECサイト向けサイズフィッティング
・福祉の現場に採用マーケティングツールを導入し人手不足を解消
・ドローンを活用した一般住宅向け点検・原状回復サービス
詳しくは、次のページをご覧ください。
(出典)公益財団法人 東京都中小企業振興公社「革新的サービスの事業化支援事業 事例集」
補助対象となる経費
対象となる経費は、次の通りです。
【対象経費】
マーケティング調査委託費、開発費(原材料副資材費、外注・委託費、直接人件費)、設備導入費、規格認証費、産業財産権出願費、販路開拓費(展示会等参加費、イベント開催費、広報ツール製作費、広告掲載費)
このように、マーケティングから開発、そして販路開拓費まで、幅広い経費が対象となります。特に、システム構築に係る設備導入費も対象であることは、大きなポイントです。
審査通過のための申請のポイント
審査通過のためには、次のポイントを満たしていることが大切です。
審査は、一次審査(書類審査)と二次審査(面接審査)があります。
書類審査においては特に、「新サービスの新規性を、客観的データに基づいて示す」「自社独自の強みと新規事業とのつながりをしっかり説明する」ことがポイントです。
また面接審査を受けるにあたって、経営者がしっかりと自分の言葉で説明できるようにしておくことも重要です。
まとめ
先端技術の登場により、私たちの社会はどんどん便利になっています。生産年齢人口が減少する中で、先端技術を使ったサービスの需要はますます高まることが予想されます。
アイデアはあるが、資金面が気がかり……そんな事業者にとって、最大2000万円の助成が受けられる革新的サービスの事業化支援事業は、挑戦する価値のあるものと言えるでしょう。
ただし補助対象経費の選定は、やや分かりにくい面もあるかと思います。審査基準への対応や面接対応などと併せて、専門家の支援を得ることも考慮に入れると良いでしょう。