「稼ぐ東京」をスローガンに、新事業として誕生した「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」。令和3年(2021年)5月6日から申請が始まっています。
最大1億円、ITツール購入も助成の対象。東京都内で事業を営んでおり、「最新の生産設備を導入したい」「DX化を進めたい」など、設備投資を検討している事業者は要注目です。
概要や助成額・助成率、申請のポイントなどを紹介します。
※「東京都版のものづくり補助金」と呼ばれた、「革新的事業展開設備投資支援事業」の後継事業です。
※革新的事業展開設備投資支援事業は、令和2年(2020年)募集分の第8回で事業終了しました。関連記事はこちらです。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?
最新設備を導入して、積極経営に打って出たい。だけど資金が気になる……そんな中小企業や小規模事業者をサポートするのが、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」です。
魅力は何といっても、最大1億円という助成額の大きさ。ITツールの導入にも対応しており、DX化を検討しながらも、資金面で二の足を踏んでいた事業者におすすめです。
ITツールの導入に活用できる補助金といえば、「IT導入補助金」も有名ですが、近年コロナ禍の影響もあり、採択率が低めです(参考記事:IT導入補助金とは?パッケージソフト導入に最大450万円)
東京都内に本店や支店を構えているなら、躍進的な事業推進のための設備投資支援事業にチャレンジしてみる価値はあるでしょう。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の公式サイト
令和3年(2021年)5月21日時点で公開されている公式サイトは以下です。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の対象
対象となるのは、令和3年(2021年)4月1日時点で、次の3つの条件を満たしている事業者です。
(1)中小企業者・中小企業団体である
まずは、中小企業者や中小企業団体であることが条件です。
◆中小企業者
中小企業者とは、次の表に該当する事業者のこと。個人事業者も含まれます。
◆中小企業団体
中小企業団体とは、事業協同組合や協業組合などを指します。
(2)都内に登記簿上の本店または支店がある
本事業が目指すのは「稼ぐ東京」です。対象となるには、東京都内に本店または支店を構えていることが条件となります。
個人事業者であれば、都内に開業届出を出している場合、対象となります。
(3)都内で2年以上事業を継続している
2年以上、東京都内で事業を継続していることも条件です。開業後すぐでは対象となりません。
対象となる事業
次の4つのうち、いずれかに合致する事業が対象です。
対象事業も、基本的に革新的事業展開設備投資支援事業を踏襲していますが、今回は「DX」を打ち出しているのが大きな特徴です。一つずつ見てみましょう。
(1)競争力強化
まず一つ目が「競争力強化」です。
競争力強化を目指して事業を行う場合、助成金の対象となります。公式サイトで例示されているのが、次の内容です。
例えば、製品を大量かつ安定的に作る体制を整えるためには、能力の高い設備が必要です。競合他社と渡り合うべく短納期やコストダウンを叶えたい場合も、求めるレベルに見合った設備が必要になります。
このように「さらなる発展を目指したい」「競争力を強化したい」といった目的で行う事業は、本事業の対象となります。
(2)DX推進
二つ目が「DX推進」です。
近年、IoTやAI、ロボットなど、デジタル技術がめざましく進歩しています。こうした最新のデジタル技術を活用して事業を行う場合、助成金の対象となります。
公式サイトで例示されているのが、次の内容です。
最新デジタル技術をうまく活用することで、新規ビジネスを立ち上げたり、既存ビジネスを変革したりといったことが可能になります。
時代の波に乗ってDX化したいけれど、資金が気になって踏み出せない……そんな事業者はぜひとも、うまく活用したいものです。
(3)イノベーション
三つ目が「イノベーション」です。
新製品の生産やサービスの提供など、新たな事業を行う場合、助成金の対象となります。公式サイトで例示されているのが、次の内容です。
支援分野は、防災・インフラや子育て・高齢者、医療・健康、交通や物流など、多岐にわたります。
(4)後継者チャレンジ
そして四つ目が「後継者チャレンジ」です。
事業承継をきっかけに、事業多角化や新たな事業展開などを行う場合、助成金の対象となります。公式サイトで例示されているのが、次の内容です。
次項で詳しく取り上げますが、後継者チャレンジは「最大1億円」「助成率2/3」と、手厚いのが特徴です。事業承継を考えている事業者にとって、心強い後押しとなることでしょう。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業の助成額・助成率
助成額と助成率は次の通りです。
(出典)公益財団法人 東京都中小企業振興公社「設備投資支援事業チラシ」
助成額は最大「3千万円」もしくは「1億円」と、かなり大型の助成金です。
助成率に関しても、競争力強化区分の中小企業者を除いては全て、助成率2/3という手厚い内容になっています。
助成対象となる経費は?
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業は、設備投資を支援するための助成金です。経費として計上されるのは、次の購入費用です。
・機械装置
・器具備品
・ソフトウェア
おおむね「革新的事業展開設備投資支援事業」と似ていますが、事業者にとってうれしい変更点が3つあります。
(1)「50万円」から認められる!
従来は機械設備を購入しても、対象となるのは「1基100万円以上」のものに限られていました。例えば50万円の機械設備であれば、経費として認められなかったのです。
ところが本事業では、下限額が50万円に引き下げられ、幅広い機械設備を助成対象とすることができるようになりました。
(2)ソフトウェアの単独購入も可能に!
ソフトウェアを購入する際、従来は機械装置と一体運用型ソフトウェアのみが対象でした。
ところが本事業では、ソフトウェアの単独購入が認められるようになり、補助対象の範囲が拡大しました。
(3)すべての器具備品が対象
従来は、「冷凍・冷蔵機能付きの陳列棚および陳列ケース」「試験または測定機器」など、対象となる器具備品が限定されていました。
本事業では制限が取り払われ、器具備品すべてが対象となっています。
審査通過のための申請のポイント
審査を通過するためにも、ポイントをおさえておきましょう。
(1)実現可能な計画を作る
審査においては、「計画が実現する見込みは本当にあるのか?」「どれほど成長が期待できるのか?」などがチェックされます。実現可能な計画を作成することが重要です。
(2)イメージしやすい内容に仕上げる
公式サイトでは、審査時に意識してほしいポイントとして、「口頭で補足説明をしなくても、読む人がイメージしやすい内容」という点を挙げています。
明瞭簡潔に書くのはもちろんのこと、具体的な数値や名称、図を盛り込むなどを心がけましょう。
(3)加点項目を積み重ねる
加点項目を積み重ねることも、重要なポイントです。主な加点項目は次の通りです。
・「IoT、AI導入前適正化診断」または「ロボット導入前適正化診断」を終了している(※)
・「生産性向上のためのデジタル技術推進事業」の支援を受け、デジタル技術アドバイザーによる提案書に基づく(※)
・東京都(環境局)に「地球温暖化対策報告書」を提出している
・東京都(環境局)に「地球温暖化対策計画書」もしくは「特定テナント等地球温暖化対策計画書」を提出している
(※)が加点されるのは、「DX推進」で申請する場合のみ。このように「DX推進」には、固有の加点項目があります。
その他の枠で申請する場合、
・指定地球温暖化対策事業所・・・・・・・地球温暖化対策計画書を提出
・それ以外の事業者・・・・・・・・・・・・・・・地球温暖化対策報告書を任意提出
することで、加点を得ることができます。
まとめ
8回にわたって実施されてきた「革新的事業展開設備投資支援事業」は、令和3年(2021年)より、躍進的な事業推進のための設備投資支援事業に切り替わりました。
「最大1億円」や対象事業など、おおむね似た内容であるものの、経費の範囲が変わるなど、より手厚い内容となり、まさに「稼ぐ東京」という意気込みが感じられます。
ただし競争が激しくなることが予想されますので、必要に応じて専門家の力も借りることもご検討ください。