高齢化が進み、医療機器の需要は増す一方です。「自社が持つ技術を生かして、医療機器分野に参入したい」と考えるものづくり企業のために、国や自治体では参入をサポートする施策を行っています。
その一つが、東京都の「医療機器等事業化支援助成事業」。最大5000万円、助成率2/3の助成金も受けられる大型の助成金です。助成額や対象経費、採択率などについて説明します。
医療機器等事業化支援助成事業とは?
医療機器等事業化支援助成事業とは、都内ものづくり中小企業を対象にした事業です。
事業を行っているのは、公益財団法人 東京都中小企業振興公社。助成金によって、試作や製品開発にかかる経費を助成したり、医療機器製販企業や病院とのマッチングを支援したりして、参入をサポートしています。
日本の医療機器メーカーは、実は中小企業が大半(約7割)を占めています。
これほど中小企業が活躍できる理由は、医療機器の種類の多さにあります。
医療機器は30万品目以上。市場が細分化されてニッチ市場が多いため、規模のメリットが働きにくく、中小企業が活躍しやすい構造となっているのです。
しかも医療機器産業は、利益率が高い点もポイント。グラフ内、青の折れ線が医療機器の利益率です。他の業種と比べて、高いのが見て取れます。
可能性を秘めた医療機器分野。とはいえ多くの企業が心配するのが、新規参入にあたっての障壁です。
多額の費用がかかる、医療機器製販企業や病院などとの連携も必要……こうした課題を解決してくれるのが、医療機器等事業化支援助成事業なのです。
医療機器分野への参入は、業許可取得や薬事申請などの課題もあり、投資回収に時間がかかることも少なくありません。ですが先々の展開を見据え、なおかつサポートも受けられるなら、取り組む価値はあるのではないでしょうか。
令和4年(2022年)9月7日時点で公開されている公式サイトは以下です。
主な支援内容
医療機器産業参入促進助成事業には、二つの助成金があります。
(1)医療機器等事業化支援助成金
最大5000万円、助成率2/3。開発から事業化までを対象とした助成金で、最長5年間の助成が受けられます。
医療機器等事業化支援助成金を受ける場合、医療機器製販企業等と連携体を構築する必要があります。
医療機器製販企業とは、医療機器の製造販売業許可を取得している事業者のこと。連携に関しては、専任の医工連携コーディネータによるマッチング支援が受けられますので、利用すると良いでしょう。
ただしマッチング支援を受けるには、「医工ものづくり会員」の登録が必要です。詳細については、医療機器産業参入支援事業をご確認ください。
(2)医療機器等開発着手支援助成金
最大500万円、助成率2/3。初期試作の経費が対象で、最長1年間です。
先ほどの最大5000万円と比べると、規模がやや小さいと感じるかもしれませんが、初期段階での500万円は大きな一歩です。
また場合によっては、医療機器製販企業との連携体も不要で、単独で申請できる場合もあります。
助成対象となる経費
助成対象となる経費を見てみましょう。
(1)医療機器等事業化支援助成金
次の経費が対象です。
・原材料・副資材費
・機械装置・工具器具費
・委託・外注費
・産業財産権出願・導入費
・技術指導受入れ費
・PMDA等相談料及び審査手数料
・直接人件費
・展示会等参加費
・広告費
原材料や知的財産関連、PMDA申請費用まで、幅が広いのが魅力です。また、販促段階の費用である展示会参加費や広告費が対象であることも注目に値します。
(2)医療機器等開発着手支援助成金
次の経費が対象です。
・原材料・副資材費
・委託・外注費
先ほどと比べると、対象経費が少ないように感じるかもしれません。ただし試作で使う経費は基本的にこの二つなので、十分カバーできることでしょう。
医療機器産業参入促進助成事業の対象
対象となるのは、主に次の3つを満たす中小企業などです。
・都内で事業を営み、登記がある。
・医療機器産業参入支援事業に会員登録している。
・開発の主たる部分を担う。
ちなみに会員登録とは、先ほども出てきた「医工ものづくり会員」を指します。会員登録の条件やメリット、実際の申し込みについては、医療機器産業参入支援事業をご確認ください。
※初期試作の経費サポートが受けられる「医療機器等開発着手支援助成金」は、都内創業予定者も対象です。
これまでの採択事例
過去の採択企業は、医療機器産業参入促進助成事業についてのページで見ることができます。
ちなみに第14回においては、申請件数18件(事業化支援助成事業9件、開発着手支援助成事業9件)に対し、10事業が採択されました。具体的な事業は、次の通りです。
このように、10件中9件が試作、残り1件も事前検証で、“新規開発によって可能性を探りたい企業”が、助成金を活用していることが見て取れます。
また開発にあたっては、プロジェクトマネージャーが選任されます。市場調査や設計、開発検証などにおいて、きめ細やかなサポートを受けられるのも特徴です。
医療機器産業参入支援事業の採択率
ここ数年の採択率を見てみましょう。
・第14回・・・・・・・18件→10件(55.6%)
・第13回・・・・・・・24件→ 5件(20.8%)
・第12回・・・・・・・23件→ 8件(34.8%)
・第11回・・・・・・・24件→ 6件(25.0%)
※申請数→採択数の順。()内は採択率。小数点2位以下四捨五入。
従来は2~3割と低調でしたが、第14回からは採択率が一気に上昇。感染症の流行により医療分野への注目が高まったためか、一気に5割を超えました。今後もこの傾向が続く可能性があります。
審査通過のための申請のポイント
第14回医療機器等事業化支援助成事業【募集要項】 において、審査の視点として挙げられているのが、次の3点です。
・技術的要素(優秀性、市場性、実現性、妥当性)
・事業目的との適合性
・経営の健全性(財務内容、事業予算など)
また書類審査に加えて面接も行われることから、書類を丁寧に仕上げた上で、きちんと受け答えできるように準備しておくことが重要と言えるでしょう。
まとめ
高齢化社会を背景に、医療市場はますます拡大傾向となり、安定市場となることが予想されます。前述の通り、中小企業の活躍の余地が多い産業でもあります。挑戦される事業者様は、制度の活用をご検討ください。 支援制度には、申請の要件や定量目標などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからご相談ください。