【6月30日〆切】事業再構築補助金(第6回)の準備はお早めに!

コロナ禍からのV字回復を目指す中小企業・中堅企業を応援する、最大1.5億円の「事業再構築補助金」。今年度は3回(第6回~第8回)の募集が予定されています。第6回の申請受付は令和4年(2022年)5月下旬~6月30日。多くの事業者が検討・準備を開始しています。

第6回では、売上が減少していなくても申請できる「グリーン成長枠」が新設されます。補助額は最大1.5億円、脱炭素や省エネなどの社会変革に挑戦する事業者には大きなチャンスです。

以下、事業再構築補助金の概要や、5つの枠の特徴、これまでの採択率などを紹介します。

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金とは、「コロナ禍をきっかけに、思い切って事業を再構築したい」と考える企業をサポートする補助金です。

コロナ後に売上が下がった」「新分野展開・業務転換などを行う」など所定の条件を満たした、中小企業や中堅企業、個人事業主などが対象となります。

事業再構築補助金の活用例として、公式サイトでは以下のような例が紹介されています。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

6回目となる今回から、100人以下の事業者は補助上限額が下がるなど、厳格化された面もあります。一方で、売上減少要件がなく、最大1.5億円が補助される「グリーン成長枠」が新設されるなど、新たな道も開けました。

コロナ禍で売上が減った、でもそんな中だからこそ、新分野展開や業態転換、事業再編などに取り組みたい……そう考えるなら、事業再構築補助金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

事業再構築補助金の公式サイト

令和4年(2022年)4月9日時点で公開されている公式サイトは以下です。

事業再構築補助金公式サイト

事業再構築補助金は、こんな事業者に!

事業再構築補助金(第6回)には、「通常枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」「大規模賃金引上枠」「グリーン枠」という5つの枠があります。それぞれ、どのような事業者に適しているかを解説します。

(1)基本的には「通常枠」

もっとも一般的なのが、通常枠で採択されるケースです。通常枠で採択された場合、補助率・補助額は次の通り。回復・再生応援枠や最低賃金枠よりも採択のハードルが高い分、上限額が大きいので、大きな計画での採択を望む事業者はこの枠がおすすめです。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

申請にはいくつかの要件がありますが、まず確認したいのが「コロナ後に、どれだけ売上が減ったか?」という点。対象となるのが、10%以上減少した事業者です。

令和2年(2020年)4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(※)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

※令和元年(2019年)または令和2年(2020年)1~3月。 

任意の3か月は、連続している必要はありません。月次売上高を確認して、この要件を満たしているか確認してみてください。

(2)売上が30%以上減少なら「回復・再生応援枠」【新設】

回復・再生応援枠は、第6回から新設された枠です。

コロナ禍による売上減少が著しい事業者を支援するためにつくられており、通常枠より補助上限額が少ない反面、補助率が高いのが特徴です。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

申請するための主な要件は、

令和3年(2021年)10月以降のいずれかの月の売上高が、対令和2年(2020年)または令和元年(2019年)同月比で、30%以上減少していること。

となります。

回復・再生応援枠は、主要な設備を変更しなくても申請可能。さらには、回復・再生応援枠で不採択となった場合でも、加点の上、通常枠で再審査が行われます。高い補助率(中小企業なら3/4)が期待できるので、上限額内の計画であればこの枠で申請すると良いでしょう。

(3)最低賃金を上回る雇用をしているなら「最低賃金枠」

近年、最低賃金がどんどん上がっています。特に令和3年(2021年)の引き上げは、過去最大。全国平均は、時給換算で902円から930円となりました。

最低賃金の上昇を背景に、最低賃金を上回る水準で雇用する事業主を支援する枠が創設されました。それが最低賃金枠です。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

補助額や補助率に関しては、回復・再生応援枠と同じです。ただし採択率に関しては、公募要領に「最低賃金枠は、加点措置が行われるため回復・再生応援枠よりも採択率において優遇されます」との記載があり、最も採択率が高くなると思われます。

申請するための主な要件は、

令和2年(2020年)10月から令和3年(2021年)6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること。

かつ

令和2年(2020年)4月以降のいずれかの月の売上高が、対前年またはは前々年の同月比で30%以上減少していること。

となります。最低賃金枠で不採択の場合は、通常枠で再審査が行われます。しっかりと賃金を支払っている事業者で、補助申請額が上限額に収まる場合は、最低賃金枠で決まりです!

(4)積極的な賃金引上げを行っているなら「大規模賃金引上枠」

大規模賃金引上枠とは、101人以上の従業員を雇用しており、なおかつ継続的な賃金引上げの取り組みを行う事業者が対象となる枠です。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

申請するための主な要件は、

補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金(時間額)を年額45円以上の水準で引き上げること。

かつ

補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させること。

となります。

大規模賃金引上枠の補助額は、最大1億円。不採択となった場合、通常枠で再審査が行われます。手厚い補助が受けられるため、該当する事業者はチャレンジしてみる価値はあるでしょう。

(5)脱炭素や省エネなどに挑戦するなら「グリーン成長枠」【新設】

グリーン成長枠は、第6回から登場した新設枠です。特例も多く、今回の目玉ともいえるでしょう。

グリーン成長枠の対象となるのは、グリーン分野での事業再構築を通じて、高い成長を目指す事業者。まず目を引くのが、最大1.5億円という補助額の大きさです。

(引用)中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

もう一つ大きなポイントが、売上が減少していなくても申請できること。しかも、事業再構築補助金は基本的に一度採択されると申請できませんが、グリーン成長枠は特別。過去に採択を受けた事業者でも申請が可能です。

また、グリーン成長枠で不採択になった場合、通常枠で再審査が行われるのも、他の枠と同じです。

ちなみにグリーン分野というのは、経済産業省「グリーン成長戦略」の重点項目になっている14分野のこと。

このように、「エネルギー関連産業」の4分野、「輸送・製造関連産業」の7分野、「家庭・オフィス関連産業」の3分野、あわせて14分野が選定されています。

具体的には以下の分野となります。

<14分野>

 ■エネルギー関連産業
 01)洋上風力・太陽光・地熱
 02)水素・燃料アンモニア
 03)次世代熱エネルギー
 04)原子力

 ■輸送・製造関連産業
 05)自動車・蓄電池
 06)半導体・情報通信
 07)船舶
 08)物流・人流・土木インフラ
 09)食料・農林水産業
 10)航空機
 11)カーボンリサイクル・マテリアル

 ■家庭・オフィス関連産業
 12)住宅・建築物・次世代電力マネジメント
 13)資源循環関連
 14)ライフスタイル関連

(引用)経済産業省「グリーン成長戦略(概要)」

一見すれば、中心になっているのは“脱炭素化”です。とはいえ住宅や食料をはじめ、暮らしに身近な分野も含まれています。幅広い事業者に可能性があると言えます。

グリーン成長枠に申請するには、

補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均5.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること
(通常はそれぞれ年率平均3.0%以上増加)

かつ

2年以上の研究開発・技術開発、または従業員の一定割合以上に対する人材育成(※)をあわせて行うこと。

(※)従業員の10%以上が年間20時間以上の外部研修又は専門家を招いたOJT研修を受けることが必要。

といった高いハードルが設けられています。ただし今後も“2050年カーボンニュートラル”実現に向け、国から幅広い支援が見込まれます。この機会にグリーン成長戦略についての理解を深めることは、ビジネスチャンスの拡大にもつながることでしょう。

補助対象経費の見直し

(1)補助対象経費の費目

事業再構築補助金は、基本的に設備投資を支援するものです。建物費や機械設備・システム構築費が中心です。

さらに、新しい事業を開始するにあたって付随的に発生する研修費や広告宣伝費・販売促進費も補助対象です。

■補助対象の例

【主要経費】
◯建物費(建物の建築・改修・撤去に要する経費)
◯機械装置・システム構築費

【関連経費】
◯外注費(製品開発に要する加工、設計等)
◯技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
◯研修費(教育訓練費等)
◯広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
◯クラウドサービス費
◯専門家経費

■補助対象外の経費の例

◯補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
◯販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
◯汎用性のある物品(例:事務用のパソコン、プリンタ、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機、家具等)の購入費
◯不動産、公道を自走する自動車の購入費
◯再生エネルギーの発電を行うための発電設備

対象経費を正しく算定して申請することは、大切なポイントであり、採択額を上げることにつながります。

(2)補助対象経費の見直し(建物費・研修費)

第6回から、条件が次のように変わります。

〈建物費〉
対象は、原則として改修の場合のみ。新築は、「補助事業の実施に真に必要不可欠かつ代替手段が存在しない場合」しか認められません。

〈研修費〉
研修費は、補助対象経費総額の3分の1が上限となります。

事業再構築補助金の採択率はどれぐらい?

申請を検討しているなら、気になるのが採択率でしょう。これまでの事業再構築補助金の採択率は次の通りです。

〈事業再構築補助金の採択率推移〉

公募全体通常枠
第1回36.0%30.1%
第2回44.8%36.3%
第3回44.4%37.0%
第4回44.7%37.9%
※第5回は未発表。

枠によって難易度は異なりますが、おおむね4割程度の採択率となっています。事業再構築補助金は、制度の内容と提出書類がたいへん複雑であり、また事業計画の審査項目も多岐にわたるため、大半の事業者が外部コンサルタントに支援を受けます。その結果、「コンサルタント同士の戦い」とも言える状況で、見かけの数値以上にハードルが高い印象です。入念な準備をされることをおすすめします。

審査は、事業計画をもとにして行われます。採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが欠かせません。

事業計画に含めるポイントとして、公募要領には、次のような内容が挙げられています。

・現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

など。経済成長に貢献できるか否かが審査項目となるため、自社の知見を総動員するとともに、必要に応じて事業計画の専門家に支援を受けると良いでしょう。

まとめ

新型コロナによる経済停滞を背景とした「事業再構築補助金」も、いよいよ残すところあと3回です。新規展開を考える事業者様は、ぜひ活用を検討してみてください。

新たに創設された「グリーン成長枠」については、グリーン社会の実現のための画期的な制度です。その一方で適用要件の判断など、悩ましい点も多いかと思います。必要に応じて、補助金事務局や外部コンサルタントなどと相談するのも一案です。

補助金を受け取るには、申請の要件や対象経費などの細かいルールがあります。きちんと満たすように心がけることが大切です。気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。