補助金の基礎知識!補助金と助成金の違いも紹介

コロナ禍において、大きな注目を集める補助金。国や地方自治体がさまざまな補助金を用意しており、影響を受けた中小企業や小規模事業者の事業継続・業態転換・V字回復・テレワークなどを支援しています。

申請準備に手間はかかりますが、返済不要。中には億単位という大型補助金もあります。該当するものがあれば、申請してみてはいかがでしょうか。

補助金の概要や、補助金と助成金の違い、審査に通るためのポイントなど、補助金の基礎知識をまとめました。ぜひ参考にしてください。

補助金とは?

補助金とは、国や地方自治体が何らかの政策目標を実現するため、その政策に合う取組を行う事業者を支援する制度です。事業者から見ると、公益に貢献しながら資金繰りも改善でき、一石二鳥と言えるでしょう。

補助金は、国や地方自治体から事業者へと交付されます。審査があるため、「申請したら必ずもらえる」というものではありません。ただし融資とは異なり、返済は不要です。

一年に複数回の公募が行われる補助金もありますが、年に一度だけ、あるいは一回限りという補助金も多く存在します。公募期間は比較的短く、多くは約1か月です。

補助金を活用しようと考えるなら、普段からアンテナを立てて情報収集し、すぐに動ける体制を整えておくことが大切です。

補助金と助成金の違い

補助金と似たものに、助成金があります。返済不要という点では同じですが、もちろん違いがあります。

▼補助金と助成金の違い(1)管轄

ケースバイケースではありますが、それぞれ主な管轄が違います。

・補助金・・・・・・・経済産業省や地方自治体
・助成金・・・・・・・厚生労働省

なぜ管轄が違うかというと、それぞれの目的が違うため。

補助金は「事業を通じて政策を推進する」ことに重点が置かれています。そして一方の助成金は「雇用・労働環境を整える」ことに重点が置かれています。

いわば補助金は「事業」を、助成金は「人」を、資金面でサポートする制度と言えるでしょう。

このように目的が違うため、

・補助金・・・・・・・コンサルタントや中小企業診断士など
・助成金・・・・・・・社会保険労務士や行政書士など

というように、それぞれを得意とする専門家も異なります。補助金申請サポートを依頼するときは、適した専門家を選ぶことが重要です。

▼補助金と助成金の違い(2)財源

財源も異なります。

・補助金・・・・・・・税金
・助成金・・・・・・・雇用保険料

このように補助金は税金を、助成金は雇用保険料を財源としています。

補助金の申請を行うには、法人税をきっちり納めていることが条件です。滞納していれば申請はできません。

逆に言えば、法人税を納めているのであれば、補助金を活用する権利があるということ。応募要件にあてはまる場合は、自社の成長のために遠慮なく利用しましょう。

▼補助金と助成金の違い(3)審査の有無

大きな違いとして、審査の有無があります。

・補助金・・・・・・・審査あり
・助成金・・・・・・・審査なし

助成金の場合、受け取るための要件が決まっており、要件を満たせば受け取ることができます。つまり審査はありません。

ところが補助金は、申請しても必ず交付されるわけではありません。審査を受け、採択された事業者のみが補助金を受け取ることができるのです。

補助金を活用するメリット

補助金を受けるには審査があり、提出書類の準備には手間がかかります。また人気の補助金は競争率が高く、非常に狭き門となります。

決して楽な道ではありませんが、採択されれば事業展開の大きな一手となる上、次のようなメリットが見込めます。

(1)投資のリターンを高め、財務リスクを抑えた事業展開ができる

投資の自己負担額が減ることにより、高い投資対効果を実現でき、財務的なリスクを減らすことができます。

(2)事業計画が明確になる

申請に際しては、事業計画書を提出します。しっかりと事業計画の形にして客観的に記載することによって、検討内容を充実させることができます。外部アドバイザーを起用する場合には、これまで想定していなかった視点からの検討も加えることができます。

(3)信頼度がアップする

採択企業であることを対外的にアピールすれば、企業の信頼度がアップし、融資審査にもプラスになることがあります。

補助金にはどんなものがある?

代表的な補助金を紹介します。

(1)ものづくり補助金

設備投資をしたいが、資金のことが気がかりで踏み切れない……。そんな中小企業や小規模事業者が活用したいのが設備投資を対象とする「ものづくり補助金」(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)です。

最大1000万円(グローバル展開型は最大3000万円)と金額が大きく、「新商品を開発したい」「製造技術を一新したい」という事業者におすすめです。

ものづくり補助金とは?設備投資に最大1000万円!

(2)事業再構築補助金

コロナ禍で売上が減り、「新事業・新分野に賭けるべく投資したい」と考える中小企業を対象とするのが、事業再構築補助金です。

補助額は1企業あたり最大1億円という超大型補助金です。コロナ禍からの復活を目指し、新たな取組を行う企業には、絶好のチャンス。補助率が高い緊急事態宣言特別枠も用意されており、期待が集まる補助金です。

事業再構築補助金とは?コロナで売上減少、最大1億円!

(3)IT導入補助金

「便利な会計給与システムを導入したい」「顧客情報をクラウドで一元管理したい」。そんな中小企業や小規模事業者が活用したいのがパッケージソフトの導入資金に対する「IT導入補助金」です。

補助額は30万円から450万円。ルーティン業務を効率化させるパッケージソフトや、顧客情報の管理に役立つシステム導入などに活用できます。

IT導入補助金とは?パッケージソフト導入に最大450万円

(4)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都)

最大1億円、ITツール購入も助成の対象。東京都内で事業を営んでいる企業を対象に、「最新の生産設備を導入したい」「DX化を進めたい」など、設備投資の補助をするのが「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」です。

※「東京都版のものづくり補助金」と呼ばれた、「革新的事業展開設備投資支援事業」の後継事業です。

「稼ぐ東京」へ!躍進的な事業推進のための設備投資支援事業とは?

補助金で知っておきたい注意点

補助金を活用するにあたって、知っておきたい注意点があります。

(1)原則として「後払い」である

補助金は、原則として後払いです。事業に使う資金は、いったん自社で全額支払わなくてはなりません。自己資金が用意できない場合は、融資でつなぐ必要があります。あらかじめ金融機関に打診しておくことをおすすめします。

ただし場合によっては、事業終了後に精算することを条件に、事前に補助金の一部が支払われる「概算払」制度が利用可能です。

(2)原則として「課税対象」である

補助金は、法人税の計算上では収入とみなされるため、課税対象となります。

ただし、補助金受給年度に大幅に納税額が増えてしまわないよう、「圧縮記帳」が認められます。詳しくは税理士にご相談ください。

(3)すべての経費が対象ではない

事業を行うにはさまざまな経費がかかりますが、すべてが対象という訳ではありません。

補助金によって、補助対象となる経費や補助率、補助額の上限が決まっています。経費の主な例として、次のようなものが挙げられます。

・原材料費
・機械設備費
・人件費
・外注費
・委託費
・専門家謝金
・市場調査費

申請する際は、公募要領(募集要項)を見て、どのような経費が対象となるのか、補助率や補助額はどうなっているのかなどを確認しておきましょう。

(4)事後の確認もある

補助金を受給するためには必要な手続があります。事業期間が終わった後、完了報告書を提出してはじめて補助金を受け取れます。さらに、数年間、年次報告が求められる補助金もあります。

報告書に不備があったり、目的外に経費を使ったりしていると、減額や最悪の場合は採択取り消しなどのペナルティが課せられることもあります。定められた「補助事業の手引き」などを熟読して、モレがないようにしましょう。

審査に通るためのポイント

補助金を受け取るには、審査に通る必要があります。意識したいポイントをお伝えします。

(1)自社に合う補助金を見つける

申請に通るための大きなポイントは、事業計画が「国や地方自治体が掲げる政策に合致しているか?」という点です。

補助金にはそれぞれ明確な目的があります。やみくもに申請するのではなく、自社に合う補助金を見つけることが重要です。

なお、中小企業庁の中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミサラポplus」には、お困りごとから補助金を探したり、よく見られている補助金を探したりするページが用意されています。こうしたサイトもうまく活用しましょう。

中小企業庁「ミサラポplus」

なお、各補助金の公募要領(募集要項)には、事業の目的が書かれています。丁寧に読み込んで、自社の状況や目指す先に合った補助金であるかどうかを、チェックしましょう。

(2)普段から準備しておく

審査に通るためには、魅力ある事業計画書を作ることが欠かせません。

事業が確実に成果につながること、社会貢献にもつながることなど、事業計画の意義や効果を「分かりやすく」「説得力ある形で」まとめ、アピールすることが肝要です。

ところが多くの補助金は、公募期間が約1か月と短め。公募が始まってから準備をすると慌ただしく、何より内容の薄い事業計画書になりかねません。

あらかじめ事業計画書を作っておけば、自社に合う補助金の公募が始まったときに、すぐ動けます。この他、補助金情報に詳しい専門家と定期的なコンタクトをとっておくこともおすすめです。今すぐ申請できる補助金がなくても、用意しておきましょう。

なお補助金の申請は、近年、インターネットを利用した「電子申請」が主体となっています。その際、「gBizID」というアカウントが必要となります。

アカウント発行には1週間ほどかかりますので、早めに取得しておくと安心です。

デジタル庁「GビズIDへようこそ」

(3)必要に応じて専門家を活用する

自社に合った補助金はあるのか、事業計画書はどう書いたらいいのかなど、はじめて補助金の申請をする場合は、分からないことが多々あるはずです。

補助金の申請準備は早めから進めることが大切ですが、時間をかけたからと言って、採択される可能性が上がるわけでもありません。

もしも不安がある場合は、必要に応じて専門家を活用すると良いでしょう。補助金の中には、専門家への謝金も経費として認めているものもあります。ぜひチェックしてみてください。

まとめ

この記事では、補助金の制度の概要をお伝えしました。当社ウェブサイトでも主要な補助金の概要を記載していますので、ご参照ください。

気になることがあれば、ウェブサイトからお問い合わせください。