設備投資をしたいが、資金のことが気がかりで踏み切れない……。そんな中小企業や小規模事業者が活用したいのが「ものづくり補助金」です。
最大1000万円(グローバル展開型は最大3000万円)と金額が大きく、「新商品を開発したい」「製造技術を一新したい」という事業者におすすめです。
ものづくり補助金の概要や補助率、申請のポイントなどを紹介します。
※正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」ですが、便宜上、通称である「ものづくり補助金」を使用します。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金は、設備投資に対して交付される補助金です。
会社が成長していくためには、設備投資はつきもの。新商品や新サービス、試作品をつくったり、製造能力を上げたりするためには、ニーズに合った設備を導入する必要があります。ただし資金面がハードルとなり、二の足を踏むことも多いでしょう。
そんなときに背中を押してくれるのが、最大1000万円の補助が受けられるものづくり補助金です。
ものづくり補助金でポイントになるのが“経営革新”。「市場に合う新製品を開発して、会社を成長させたい」「最先端の製造設備を導入して、生産性を上げたい」といった構想があるなら、検討してみる価値はあるでしょう。
なお“ものづくり”といっても、対象は形あるものだけではありません。サービス開発や、アプリ開発をはじめとしたシステム開発にも適用されます。
しかも、創業間もない事業者には加点措置もあります。新設備で生産性向上を目指す製造業者は当然として、IT業界のスタートアップやベンチャー企業にとっても、大きなチャンスと言えるでしょう。
ものづくり補助金の公式サイト
令和3年(2021年)4月28日時点で公開されている公式サイトは以下です。
公式サイト内では、これまでの事例も紹介されています。「新商品」「3Dプリンタ」といったキーワードでの検索も可能ですので、イメージをつかみたい方は参考にすると良いでしょう。
(参考)公式ホームページ「ものづくり補助事業 成果事例のご紹介」
ものづくり補助金の対象
ものづくり補助金の対象は、小規模事業者を含む「中小企業者」です。
(1)中小企業者(組合関連以外)
中小企業の定義は、業種によって異なります。
ものづくりというと製造業を連想しがちですが、小売業や卸売業、旅館業なども対象です。
(2)中小企業者(組合関連)
商工組合や商店街振興組合、水産加工業協同組合など、組合も対象です。
(3)特定非営利活動法人
中小企業の振興や発展に直結する活動を行っている場合は、特定非営利活動法人も対象です。
ただし「従業員数が300人以下」「認定特定非営利活動法人ではない」など、いくつかの条件があります。詳しくは公募要領でご確認ください。
ものづくり補助金の補助額・補助率
ものづくり補助金は、大きく3種類に分けられます。
・一般型
・グローバル展開型
・ビジネスモデル構築型
なお、応募数や採択数を見ると分かるように、ほとんどの事業者は「一般型」に当てはまります。
類型 | 応募数 | 採択数 |
---|---|---|
一般型 (R3.2.22〆切の回) | 5,139 | 2,291 |
グローバル展開型 (R3.2.22〆切の回) | 160 | 46 |
ビジネスモデル構築型 (R2.6.12〆切の回) | 356 | 18 |
それぞれの概要と補助額・補助率を見てみましょう。
(1)一般型
一般型には「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠」があり、後者でポイントになるのが“コロナ対策”です。
「対人接触を減らすための新商品・サービスを開発する」「ポストコロナをふまえたビジネスモデルに転換する」といった場合、低感染リスク型ビジネス枠の要件を満たす可能性があります。
■補助額
100万円~1000万円
■補助率
〈通常枠〉
中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
〈低感染リスク型ビジネス枠〉
2/3
通常枠は、規模によって補助率が変わります。中小企業者は1/2ですが、小規模事業者は経費の2/3までが補助されます。
低感染リスク型ビジネス枠では、事業者の規模に関わらず一律2/3です。
低感染リスク型ビジネス枠で不採択になっても、通常枠で再度審査を受けることができます。コロナ対策をふまえた事業展開を考えているなら、検討してみる価値はあるでしょう。
(2)グローバル展開型
海外事業を拡大・強化するために設備投資を行うなら「グローバル展開型」です。
■補助額
1000万円~3000万円
■補助率
・中小企業者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/2
・小規模企業者・小規模事業者・・・・2/3
グローバル展開型は、最大3000万円と補助額が高く設定されています。輸出用の生産設備導入などを検討している場合には、ぜひご検討ください。
(3)ビジネスモデル構築型
中小企業のサポートを行う支援者向けです。
■補助額
100万円~1億円
■補助率
・大企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/2
・それ以外の法人・・・・・・・・・・・・2/3
最大1億円という補助額が魅力ですが、採択数も少なく、基本的に大きな事業者向けで、令和3年(2021年)の公募は、3月に終了しています。
補助対象となる経費は?
「一般型」「グローバル展開型」に絞り、経費についてお伝えします。
補助対象となる経費は、基本的には設備投資のための費用です。機械装置・システム構築費などが主な内容。人件費や販促費などは対象になりません。ただし、いくつか例外もあります。
(1)広告宣伝・販売促進費
一般型の低感染リスク型ビジネス枠の場合、「新サービスの広告をつくる」「新製品を広めるために展示会に出展する」といった広告宣伝・販売促進費も対象となります。
(2)海外旅費
海外事業を展開するにあたり必要不可欠な場合、グローバル展開型では、海外旅費も対象となります。
(3)専門家への謝金・旅費
人件費は対象外ですが、専門家に支払う謝金や旅費などは例外です。
専門家のサポートが必要な場合、1日5万円までの経費が対象となります。
審査通過のための申請のポイント
ものづくり補助金は、下のグラフからも分かるように、採択される件数が申請数の半分にも満たないことがほとんどです。
令和3年(2021年)の2月・3月に行われた採択発表を見てみると、一般型の採択率は次の通りです。
・4次・・・・・・・・31.19%
・5次・・・・・・・・44.58%
※小数点第2位以下切り捨て
(出典:ものづくり補助金総合サイト「採択結果」)
採択されるか否かは事業計画書にかかっているため、説得力のある書類に仕上げることが重要です。加点項目を積み重ねることも、採択への道を開きます。主な加点項目は次の通りです。
(1)経営革新計画の承認
経営革新計画を作成して申請し、承認を受けると(申請中を含む)加点が受けられます。
(2)創業(第二創業含む)から間もない
創業や第二創業から5年以内の事業者は、自動的に加点が得られます。
(3)事業継続力強化計画の承認
事業継続力強化計画の認定取得も、加点対象です。
(4)一定以上の賃上げ
「総賃金の2%以上の賃上げ」かつ「最低賃金の+60円以上」を満たすことで、加点が得られます。
(出典:公募要領)
まとめ
ものづくり補助金は最大1000万円。中小企業や小規模事業者向けとしては、大きな金額です。この補助金をきっかけにすれば、会社を成長へと導くことができるでしょう。
ただし、大きな経営判断であることには違いなく、決してリスクはゼロではありません。審査に通るための書類を作成し、なおかつ適正な使い方をするためには、専門家を活用するのも一つの手段です。